【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第33回)1月11日〜1月17日

歌人toron*さんの短歌日記をおとどけします
短歌マガジン 2025.01.22
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[短歌日記]

ナイフのように爪先立ちで 第33回

toron* 日記 1月11日〜1月17日

  精製を重ねた塩を卓上に死後こそこういうあかるさだろう

1/11(土)

 寒波が到来しているのでかたつむりのパネルヒーターを昼夜つけっぱなしにしているのだけれど、よく資材と水槽の間に挟まっていて、引っ張り出してみると微妙にぬるくなっている……あったかい方が好きなのかもだが、大丈夫なのか……?

 そして夏生さん、不調からいまいち治りきらないので内科に行くとまさかの血液検査ということになった。

 夏生さんは「いや、たぶん何もないでしょ」というが、自分はハイパーネガティブなので「何もないとかないだろ」みたいな思考に陥ってしまう。ミステリは語り手も犯人かもしれないという気持ちで読むタイプである。

 結果は火曜日に解るということだけど、わたしの方が妙にそわそわしている感じがある。

 晩ごはんにふるさと納税のホタテを解凍してお刺身とかサラダに。

サラダはキウイとパクチーと柚子でやってみたのだが、パクチーの主張が思ってた強くなってしまった。別で食べるべきでしたな。ちなみに青森のむつ湾の帆立にしたのだけど、現地で食べたときの味がしっかりよみがえってきてくれた。

 食べながらアニメの『メダリスト』第1話を見る。

まだ1話なのに3回くらい泣いてしまって、自分の涙腺のゆるさを目の当たりにするなど。でも夏生さんも一度見たはずなの泣いていたので、まあいいか。

 寝る前、はじめてエプソムソルトを湯船に入れて浸かってみたところ、サウナに入ったときの「整う」感じが10分くらいでやってきてすごかった。

1/12(日)

 午前中、家事いろいろ。あと、京都文フリ会場へ発送するための商品を荷造り。

 荷造り、意外と時間がかかってしまったが、去年5月に東京文フリのために発送したときはまじのぎりぎりになってしまって、夏生さんにヤマトの集荷所まで車で運んでもらったのだった。そのことを考えると、発送自体はめっちゃ早くできた。何年文フリ参加してるんやって話だが……。

 その後、晩ごはんのポトフの煮込み具合を夏生さんにまかせて、奈良公園までピクミンブルーム。

 きょうはコミュニティデイだったので1万歩は歩きたかったのだけど、いっきに1万歩あるこうとしたら、後半、だいぶ足の各関節がきしんできた。

 晩ごはんのポトフ、きょうは年末に仕込んでいた塩豚を使ってみた。

その他の野菜は大根、にんじん、白菜、という感じ。塩豚だと何も加えなくともしっかり出汁が出て味が決まる。

 晩ごはんの後で勇ちゃん、羊子さん、茉莉花さんとLINEでグループ通話、兼新年会。

 この日記に以前書いたのかもだけど、昨年の晩秋くらいに飲んだ勢いで決めた伊賀旅行を敢行するための打ち合わせなのである。

 レンタカーで行くのだが、わたしは運転要員ではなく、運転は勇ちゃんと茉莉花さんが交代でするのでルートもかなり考えてくれていて、それに加えて羊子さんが既に「遠足のしおり」的なレジュメを用意してくれていたので、あとは当日のご飯とか翌日に何処か寄り道するかを決めるくらいだった。

 まあ、いうてもいろいろ雑談などしていたので、2時間くらいは喋っていたが兼新年会なので、いいのである。

 当日のお昼は天理ラーメンの本店に行くことになった。そういえば、奈良にいるし近鉄奈良駅にもJR奈良駅にも店舗があるのに、まだ食べたことなかったな、天理ラーメン。

1/13(月)

 休みだが夏生さんのお弁当づくりをきょうは交代したために5時に起床。

ハイパー強いねむけと戦いながらお弁当を詰める……そしてほぼ詰め終わる段階で、そういえばわが家の弁当って、常備菜や冷凍食品を詰めるだけなので、前日に詰めて冷蔵庫入れてたらいいのでは……という「真理」に気がついてしまった。

 うわーー。おれも夏生さんも(夏生さんなど早番の日は4時前に起きて)、苦行のように弁当をつめていたのだが、あの時間はなんだったんだ……。

 失意にうちのめされてその後二度寝——するとなんと3時間も経っていた。

 失意のままに図書館に本を返却しに行く。めずらしく、借りたいものがピンと来なくて特に何も借りずに帰る、ということをしてしまった。

 夏生さんの血液検査の結果に対する、漠然とした不安感が底の方にある感じ。

 気分を変えたいということもあるが、iPadをレンタルで発注して、ネットフリックスに再入会する。

 というのも『ドロヘドロ』の第2シーズンがネトフリで今年放映決定したというニュースが流れてきたかなのだった。

 IKKI時代からの原作ファンで、第1シーズンも履修した自分にとっては、ようやく……という感じである。……ってゆーか、第1シーズンからもう5年も経っているのか。第2シーズンで完結できる気がしないので、できるだけ長生きせねばならない……。

 晩ごはんは粕汁、蒸した野菜と鶏ハム、常備菜の切干大根のサラダ、小松菜のぽん酢しょうゆ漬けなど。

 食後、昨日の晩もさっきの晩ごはん中にも「先に風呂に入るときに湯船にエプソムソルトを入れてほしい」と云ったのだけど、心配になって見に行ったら案の定、夏生さんは湯船に別の入浴剤を入れていた。メメントか。

「いやあ、10分しか記憶が持たなくて……」

 と、云われたが、わたしは笑いながら謝ってくる相手に対して厳しい。

「風呂のお湯ぜんぶ飲んで」

「いや、無理だから……」

 しかし、夏生さんは早々にわたしの冗談が通じないところを察し、あがった後で風呂場のドアに「エプソムソルト入れる」と書いたメモを貼っていた。

 頑張って忘れないようにしてくれている嬉しさと健気さを感じるが、ここまでやらないと忘れられてしまうのか、という感情が合わさって謎に泣きたくなってしまう。

1/14(火)

 会社に行く途中、民家のガレージに例のつばめがまだいるのを見つける。

 先日のぞいたとき姿が見えなかったので、もう駄目だったのかと心配していたのだが、巣の淵に立って羽づくろいしていた。

 この寒波のなか生き延びてくれていて、朝から情緒が不安定になるなど。来週、最高気温が15℃になるらしいので、それまで保ってくれたらと思う。

 夏生さん、血液検査の結果出る。ひとまず問題なしということではあったが、いろいろ「指導」が入って、当分は、ラーメンとかパスタとか、炭水化物と脂質のみの食事は避けていくかということになった。

 夏生さんは観音坂独歩と身長と体重がほぼ一緒なので、おやつにカップ麺と菓子パンを食べ、晩ごはんに白いご飯をおかわりする、という「やんちゃ」もわりと流していたのだが、やはり流してはいけなかったようである。見た目には出ていなくても臓器の方は疲れているらしい。

 晩ごはん、小松菜とエリンギ、豚肉のオイスターソース炒め、山なめと豆腐のお味噌汁、常備菜の切干大根のサラダなど。

 20時半からたんたん拍子のVol.7のためのミーティング。

 夏生さん、きょうはメモの甲斐もあって、エプソムソルトのミッションはクリアできたようである。

 しかし、日付が変わる直前に入ったからか、思考が「人生とは……」のモードに入ってしまって、サウナでいうあの「整う」感じを得られなかった。やっぱり、まずは早く寝ないと駄目なのか。

1/15(水)

 5時半、めちゃめちゃ身体のだるさを感じながら起きる。起きたが、昨夜やり残したこと……かたつむりの水槽の掃除や常備菜をつくり足したりしているあいだに、特にアドレナリンが出て緩和されるということはなく……けっきょく仕事が終わってからもずっとだるくて、整形外科に寄らなければ、という義務感あっさり倒されて帰宅。

 しかし、せめて金曜日にはいかなければ、このままではバッキバキの肩で文フリに参戦することになってしまう。

 晩ごはんに夏生さん作のケンミンの汁ビーフン。白菜、にんじん、かにかま、豚肉、玉ねぎなどいろいろ入れてくれていて美味しい。いちおうこれは野菜、たんぱく質多めでかつビーフンは脂質が抑えめなのでOKということにしている。

 焼きビーフンばかり食べてきていたけど、初の汁ビーフン。こっちの方が好きかもしれない。具がたくさん入っているので出汁がいい感じに複雑になっていて、麺がのびにくいのもいい。

 全然だるさがとれないが、常備菜つくり足しの後半をやってから寝る。ちなみに味玉、ピーマンとさつま揚げのきんぴら、豆苗のナムル、にんじんと玉ねぎのマリネなどをつくりました。

 テレワークがあることが前提の生活リズムになってしまっているので、週の半ばに常備菜をつくり足すことになってしまう。なんとかしなければ、という気持ちだけはある。

 角田光代のブックレビューを読んで、佐藤正午の7年ぶりの新作『冬に生まれる子供』が面白そう、と思う。

正直、角田光代のレビューを読んでもあらすじがまったくわからないのだけれど(どうも話の筋が複雑で、レビュー制限上の字数では説明することが難しいようである)、「すごそう」なことは伝わってきた。

1/16(木)

 きょうもうっすらだるいまま眼がさめる。なんとなく気がついたんだが、これってエアコンをつけたままで寝ているからだったりするのだろうか……?

 そう、ちゃんと書いていなかったのだけど、今週からエアコンをつけっぱなしで寝ることにしたのである。というのも、夏生さんが「寒さで2時とか3時くらいに眼がさめてしまう」ということでそうしたのだが……いちおう、湯たんぽなども既に使用しているのでもうこれはエアコン案件かな、と思ったのだけれど……。

 夏もこんな感じで互いにとっても最適なエアコンの温度が違うことでの体調不良があったのだが、もうこれは各々の個室を持たない限り春夏秋冬一生つづく問題なのかもしれない。

 夏生さんから帰り際にLINE。めちゃめちゃありがたいし、けっこう元気になってるやん、と嬉しくなる一方で、月詠は大丈夫なのか心配になる。きのうの時点では確か0首だったので……。

 どちらにしろ、今日は朝にほぼ準備をしてきていて、味噌汁などもつくってきているのでご飯を炊いてもらうだけお願いする。

 晩ごはん、蒸した野菜と鶏ハム。きょうは蕪、かぼちゃ、白菜、ブロッコリーを使いました。豆腐となめこの味噌汁、常備菜いろいろ。

 ひさしぶりに割とゆっくりできる夜だなあ、と思ったが文フリの細かい準備がまだ残っているのだった。ネトフリで『BEASTARS』のシーズン1を再履修しながら、値札のラミネート作業などをする。

1/17(金) 

 5時半起床。もう今週末に迫っている京都文フリの準備や、来週の講座準備で仕上がっていないことが多々あるような不安があって、できていないことをノートにわーーっと書き出してみたが、以外にもできていないことはそれほどなかった……不安と緊張なだけということが解って良かったが。

 しかも今回、京都文フリはさすがに取り扱い商品が多くなってきたので、会場へわりと早めに発送してしまったので、それでも気持ち的にはまだ楽なのである。

 と、いうことを考えていたら朝6時を過ぎていた。

 そういえば今日は阪神大震災からちょうど30年目の年なのだった。

 震災のとき、家族は大阪の豊中市に住んでいたので、震度5弱くらいはあったもののこれといって被害もなく避難を強いられることもなかったが、父の会社が当時神戸にあったので、入居していたビルはなくなってしまった。

 父もあまり子どもにはそういう「わからせる」話をするタイプでもなかった(と、いうか父は母とさえ話ができればもうそれで満足なところもあった)ので、父が神戸まで水を背負って運んだり、被災した同僚の人の子どもにおもちゃを寄付していたりというのは、ずいぶん後になってから知ったことである。

 第1回のルミナリエも家族で見に行った。今思えば父はスーツで夜から合流していたので、平日だったのだろうし、もしかするとその初日に行った可能性もある。

 瓦礫になった神戸を目の当たりにしていた父にとって、感慨深いものがあったからだろう。

 もっとも、当時のわたしは、非常に察しが悪く、共感力も低い子どもであったから、平日に延々と知らない町を歩かされて、寒しい疲れて帰りの電車で不機嫌だった記憶がおぼろげにあるだけである。

 こういう、何十年も経ってからようやく気づく背景がたくさんあって、自分はあまりいい子どもではなかったなとよく思う。

仕事終わりに整形外科に行ったが、先生が体調不良のために休診とのこと。これでバッキバキの肩で文フリに参戦が決定してしまう。うわーー。

晩ごはん、夏生さん作の麻婆豆腐、にんじんと玉ねぎのマリネ、豆苗のナムル。

iPadが無事に届いていたのでアプリなどいろいろ入れてみる。

これまで動画などは互いのスマホをテーブルの上に置いてみるしかなかったので、一挙に楽しみが増える感じ。

(つづく)

■歌人プロフィール

toron*(とろん) @toron0503

大阪府豊中市生まれ。うたの日育ち。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。第1歌集『イマジナシオン』(書肆侃侃房)。

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