【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第44回)3月29日〜4月4日
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[短歌日記]
ナイフのように爪先立ちで 第44回
toron* 日記 3月29日〜4月4日
ピース・オブ・ケークさくらのあかるさを抱えなおしてここから四月
3/29(土)
午前中、掃除などして『メダリスト』を見る。もう12話目で次回が最終回(!?)なのだけど、意外とアニメオリジナルのシーンが多い。
例えば、今回だと目標達成シートが廊下に貼られているシーンが追加されていた。
画面がアップになってミケちゃんが「3回転サルコウ」以外に「ナッチン信じる」「ひとりじゃない」と書いていたことが判明して情緒があっさり崩壊した。
アニメ版ではたぶんミケちゃんは第1期の重要なキャラとして位置づけられている描き方をされていて、そのためか原作より好きになった気がする。
ちなみに三代つづいた大阪人の自分からすると、蛇崩先生や亀ヶ谷先生の関西弁にはまあまあ違和感があるのだが、ミケちゃんの三河弁はかなりいいらしい……と、三河に親戚の多い夏生さんは云う。
さて、きょうは夕方、大阪まで牡蠣を食べに行く
大阪行きの近鉄電車のひとの多さ、そしてなんばのひとの多さに夏生さんがおびえるのをなだめて、四ツ橋で下車。
わたしもこの店に行く以外で四ツ橋であまり降りたことがない。オリックス劇場に行くためにむかし降りたことがあるくらい……あれは確かヒトリエ×plenty×Coccoのスリーマンだった気がする。ってゆーか、今思うとすごいラインナップだな。星と星のすれ違う一瞬に生まれる熱量、という感じ。
きょうは生牡蠣と蒸し牡蠣とワインの飲み放題のコース。このコースは1~3月の間だけの限定で、その期間にほぼ毎年訪れている。
ホタテなどは実は自力ですいすい泳ぐことで有名だが、牡蠣に関しては生まれたところから移動することはない。なので、牡蠣は生まれた場所がすなわち墓になる。そして自分の二代前、三代目の墓が自分のすぐ近くにあるのだ。
めちゃめちゃ短歌的素材になりそうだと、ここ5年くらい牡蠣に関するこのエピソードをあたためていたが、意外と短歌にするのが難しい。なので、このタイミングで日記に書いてしまう。
牡蠣はめちゃめちゃ美味しくて、しかも牡蠣を食べながら飲むと不思議と酔いがまわらない。牡蠣に含まれているタウリンのおかげかもしれない。
レモン、黒コショウ、ガーリックなど、かけるものはたくさん用意されているけれど、自分はぽん酢で食べるのがいちばん好きかもしれない。語彙を喪失させながらたくさん食べた。
このお店を知ったのはおそらく10年近く前なのだけど、その間にコロナとか、諸々の影響の物価高などがあって、コースも当時より1500円くらい値上がりしてしまった……でも、そういう諸々を乗り越えてまだお店がやってくれていることが嬉しくもある。
来年も元気に牡蠣を食べに来られたらいいなと思う。
3/30(日)
午後、夏生さんとならまちのNAOTに靴を買いに行く。
かなり長い間、自分にぴったりしたフラットシューズに出会えずにいるのが悩みなのだが……履き心地がいい靴には出会えても、だいたいわたしが履いていると3ヶ月くらいで靴底や踵が破れて、1年履けたことがない。値段が手軽な靴ならあきらめられるのだけど、1万円前後の靴でもこんな感じになってしまう。
と、いうことを以前、華子さんに話したら、NAOTという靴を紹介してくれたのである。
華子さんも靴が一瞬で摩耗する人種らしく、いろいろ調べてここに辿り着いたとのこと。ここの靴は摩耗しにくいし、したとしても踵や内側の修理をしてくれて相当な年数履き続けられるらしい。
なので、春になってブーツを履かなくなったらぜったいこの靴を買うぞ……! と、気持ちは高まっていたが、こんないい靴はもちろんいいお値段がするので、なかなかタイミングが……。
と、夏生さんに話したところ、誕生日プレゼントの前倒しということで買ってくれるとのことであった。思わずフラットシューズの舞を舞う。
NAOTは本店が奈良にあって、しかも家から歩いて10分くらいにある。
一応、ネットを見てだいたいどのデザインにするか決めていたものの、試し履きをさせてもらうと靴に足が吸いついてくるようなフィット感で、これは買わねばという気持ちが強くなった。「CLARA」という紐のないタイプのデザインにしました。
夏生さんに感謝。これから生活も仕事も短歌もがんばらねばと思う。
帰り道に商店街の、以前から行ってみたかったチーズケーキ専門店に寄れたりもして、充実度が高い……。
晩ごはん、チキンのトマト煮。いんげんと冷凍ブロッコリーも一緒に煮込む。味見をしたらだいぶ青い味が強かったので、砂糖とケチャップ、粉チーズを入れてさらに煮込んだりした。それとえのきと小松菜のお味噌汁、茹でキャベツのおかかとぽん酢和え。
あしたさっそくNAOTの靴を履いてみようと思う。
3/31(月)
黒の組織の支店長が今日こそ来るのではとふるえながら仕事をしていたが、きょうも結局来なかった。
気持ち的にはこのまま来なくても全然かまわないのだが、交通費を持ってきてくれる(黒の組織の交通費は手渡し支給……)はずので、物理的には早く来てほしい……。
そういう月曜らしいトピックスもあったが、さっそく履いてみたNAOTの靴、とても良かった。
革がまだ固いのだけど、店員さん曰く、1週間でかなりなじんでくるとのこと。実際、固いのに靴擦れなどは全然起こっていなくて、さすがだなあ、と思った。
晩ごはん、夏生さん作の肉じゃが、えのきとわかめのお味噌汁、常備菜の大根とうす揚げの煮物。
煮物の大根がそういうたちなのか、妙にさくさくしていて、自分でつくったのにいまいちだった。水曜のお昼、カレーうどんにする予定なので、そのとき自分で片づけてしまおう。
来月からはやく寝る強化月間にしているので23時半にはベッドに入る。ってゆーか、23時半ってそんなに早くないかもしれないが。
『塚本邦雄歌集』(書肆侃侃房から出ている緑の表紙のやつ)から『日本人霊歌』をぼんやり読んでからねむる。
われがもつとも惡むものわれ、鹽壺の匙があぢさゐ色に腐れる/塚本邦雄
城のごときものそそりたつ靑年の内部、怒れる目より覗けば/同上
突風に生卵割れ、かつてかく撃ちぬかれたる兵士の眼/同上
『装飾楽句』と迷うけれど、塚本の歌集ではいちばん『日本人霊歌』が好きかもしれない。
好きな歌をならべてみると、句読点がわりと自然に使われていたことに気がつく。けっこうラフな感じに見えるのに異物感がないのは、作者の必然性を感じるからなのだと思う。
4/1(火)
早く寝たのにまあまあ眠いし節々に謎のだるさ。しかし会社のマシンで10時頃にコーヒーを淹れて飲むとほとんどなくなった。
これはカフェインの力なのだろうか……カフェインは血管を収縮させるので、飲むと肩こりがひどくなるとは聞くのだけど、なんか怖いな。
晩ごはん、夏生さん作の鮭のちゃんちゃん焼き、かにかまと卵のスープ。
きょうはわたしが担当してホイル焼きにでもしようと思っていたのだけど、全然帰るのが遅くなってしまったので、ありがたかった。バターと鮭の組み合わせが美味しい。
食べながら夏生さんが「きょう仕事中ずっと考えてたんだけど……」と切り出すので思わず身構えるが「医療保険、共済に変えようかな……保障が薄いわりにやっぱり高いというか」ということだった。
そういえば先週、わたしの入っている共済の方が入院日額などは倍なのに、保険料は3分の1ということに、ショックを受けていたのだった。
「まあ、そんなに余裕ないわけじゃないんだけど、米が全然値下がりしないし、スタッドレスタイヤも今年買い換えないといけないとか考えると……」
確かに保険とかスマホの料金から見直すというのはけっこう定石なので、それ自体は追い詰められているとかではないのだけれど、それでも米がずっと高いことに先の見えない怖さを感じてしまう。
ガソリンの補助金も4月から再開するというニュースは出ているけれど、まだ反映されている様子もない。ってゆーか、一昨日NAOTの靴を買ってもらってなんか申し訳なかったな……。
漠然とした不安にとりつかれそうだったのでお風呂でキュウソネコカミの『私飽きぬ私』のイントロ部分「不安だ不安だ不安だうぉー!」を叫ぶ。叫んでから「うぉー」じゃなかった可能性を少し考える。