[短歌日記] toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第5回)6月29日〜7月5日

本日は歌人toron*さんの短歌日記をおとどけします
短歌マガジン 2024.07.07
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[短歌日記]

ナイフのように爪先立ちで 第5回

toron* 日記 6月29日〜7月5日

  摩耗して摩耗してなお真っ白に咲きたるバジルにんげんのよう

6月29日(土)

 午前中に洗濯をして、商店街の100均などに行く。その後、車でビックまで買い出し。初回以外に説明をしていなかったけれど「ビック」とはイオンの郊外型店舗のことである。

お客様デーだったけれど、今月は29日と30日の2日間開催だったので、そこまで混んでいなかった。……とはいえ、店舗自体が巨大なので、事前につくったメモの通りにカゴに放り込んでいっても、だいたい1時間以上は店内にいて5,000歩はあるいている。

 その後、夏生さんは大学サークルのOBの集まりで京都へ。ちなみに自分はこれまで生きてきたなかで、抜けたあとのクラブやサークルを訪れたことが一度もない。なんやかんや、部長とか副部長とか渉外とか役職についてたことの方が多いのだけど、卒業後どういう感じで訪れたらいいのかずっと解らない。

 いや、どういう感じというのはないのか。あまり人間関係で、懐かしくなって会いたくなる、ということがない気がする。

 離れて相当な年月の経ったひとは、もはや自分の知っているひとではなく、その変化に対して興味よりも、怖さや抱えきれなさとかを感じる。そして、自分自身のあまりの変わらなさと、変わってしまった部分に向き合うと疲れてしまうから、なのだと思う。……もっとカジュアルに感じればいいのだとも解っているけれど、それでもそういう集まりに行けるひとたちが、総じてまぶしい。

 掃除などしようかと思っていたが、午前中に活動しすぎて1時間半ほど意識を失う。

 その後もなんとなく気力が湧かず、だらだらしつつ短歌アンソロジー『海のうた』をめくったり……ひさびさにひとりの晩ごはんなのだけど、特に何か趣向を凝らすことも酒を飲むこともなく(スラム街にいた頃の自分が知ったら驚愕しそうだが)、パスタキューブを使って簡単につくる。

 「パスタキューブ」はフライパンにパスタと野菜を入れた後、投入すると一発で味が決まるパスタ界の味覇的存在なのだけど、このCMに『きのう何食べた?』の小日向さんとジルベール役だった山本耕史と磯村勇斗が出ていて、異世界転生感があって良い。 

 ちなみに具材は茄子、パプリカ、ソーセージでつくりました。けっこうジャンクな味になって美味しかったです。

 その後も原稿を少しやったりしつつ、23時にはベッドに入る。夏生さんが帰って来たのは0時半くらいで気配だけなんとなく感じた。

6月30日(日)

 夏生さん、きのうはめちゃめちゃ楽しかったらしく二日酔い。ベッドまでグリーンダカラとイブを配給するなど。

 しかし夏生さんは酒を飲んでも顔色が変わらなくてすごいな。肝機能がいい仕事をしているのだな、とたぶんずれた感心の仕方をしてしまう。

 わたしの方はきょうは華子さんの家へ宅飲みに行くので、その前に来週の常備菜の仕込みを済ませる。味玉、小松菜とちくわの辛子和え、キャロットラペ、きゅうりのじゃばら漬け、えのきの梅和え。きのうビックで買ったジャンボパックの肉類も小分けにして冷凍する。

 それと、持って行くように、庭のバジルを混ぜ込んで豚こまでミートボールをつくる。味つけはナンプラーとレモン。これは堤人美さんの『小さなひと皿100』という本に載っているレシピから。その他、事前に買っておいた日本酒の春鹿の超辛口とデザートチーズを保冷バッグに入れたらけっこうな荷物になった。

 華子さんの家まで、はじめて奈良から行くのだけど、奈良は京都を目指す際、近鉄とJRで違う顔をしている。……つまりJRで行くと景色はほぼ山と竹藪という感じだ。夜だと心細いけれど、ほぼ必ず最初から座れるのはいい、かもしれない。

 到着すると、既に小窓さんも着いていて、ローストビーフを持って来てくれていた。牛肉とか食べるの久しぶりなこともあるけれど、手放しで美味しかった。

 華子さん作の肉じゃがの野菜はきっちり面取りされていたし、その皮を素揚げして、サラダの上に散らしていたりした。これは華子さんが通っている料理教室のテクニックらしい。素直に勉強になる……。

 三室戸寺の紫陽花を見に行く予定だったのだけど、話しこみ過ぎて閉館の時間が近くなってしまったので、華子さんが最近ついに中古で全部集めたという『サイボーグ009』(平成版)の鑑賞会をする。

 『サイボーグ009』の平成版、原作から現代のアレンジがめちゃめちゃ上手くできていて(特に008のプロフィール)、今でもファンなんなのだよね。絵の方も今見ても全然古さがないのだけど、ただ、今見ると、背景は荒野とか、モロに止まっていたり使いまわしが多いことにも気づいてしまった……盲目的に好きな当時からちょっと冷静になっていることを自覚して少しさみしい。

 20時前には解散して、帰り着いたら、夏生さんにめっちゃ褒められるなど。……以前、飲みすぎて前後不覚になり恩智まで行ってしまって車で迎えに来てもらったことがある所為だろう。

 今年はまだ前後不覚にまではなっていないが、来月既に飲み会が3つある。恩智の暗さと何もなさが怖かったので、意識を保ちつづけたい。

7月1日(月)

七月、と天使は言った てのひらをピースサインで軽くたたいて/木下龍也『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』

 の、七月ですね。夏生さんが「もう一年の半分が終わってしまったのか……」と云うので「せやで、仕事行って帰って来て週末にビッグと整体と歯医者行ってたら六月が終わってしまったんだよ」と返したらけっこうウケてくれたが、笑い事ではないくらい年月が早い。

 ちなみにきょうは奈良に引っ越してちょうど1年でした。お祝いにケーキなど食べる。

7月2日(火)

 所属先は黒の組織だが、ここ6年くらいはハイパーホワイト会社に出向しているので、デフォルトで残業がない状態である。忙しさの波は無論あるが、テレワークや時差出勤なども可能な職場なので、わりと家庭の状況に合わせてフレキシブルに働くことができる結果なのだと思う。

 しかし、所属先の黒の組織がこんなカルチャーを理解できる訳はなく、きょう突然「残業は経験値になるので、スキルアップと思って取り組んでもらわないと困る」と電話がかかってくるなど。

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