第20回毎月短歌・連作部門(選者:藤宮若菜さん)選評発表
[次世代短歌プレミアム]
(選者の原稿を預かり、編集部で記事化させていただきました)

はじめまして。
1月に第二歌集『天国さよなら』を上梓しました藤宮若菜と申します。今回はご縁があり連作部門の選者をつとめさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
特選、次席、三席に加えて、選外の連作から好きな歌を5首ピックアップしました。
特選
『星の名前』せんぱい
目を閉じてめぐる光の渦たちよいつか生まれる星のはじめの
ほんとうの名前をかざし星たちは飛び込んでくる大気に 人に
個別の歌を引用したものの、連作全体としての温度感の統一がとても上手いなと感じた点が最大の評価ポイントです。
「星の名前」というタイトルと内容に非常に一貫性があり、人という小さなもの/星という大きなものという、言ってしまえばある種〈やりがち〉なテーマにもかかわらず、1首ごとのクオリティが高いため飽きずに読みすすめることができました。
今回は8首の連作でしたが、20〜30首の連作になったとき、星/人以外の裏テーマを組み込むことで、さらに深みを増した連作として本領を発揮するのではないかな、と思います。
次席
『ラ』宇祖田都子
遊園地かと思ったら国境で入れた人と弾かれた人
それからは切り離されたまぶたほどやわらかい暗がりばかりです
こちらは単純にわたしが好きな歌や胸騒ぎするような歌が多かった連作です。
遊園地、市街地、暗がり、不穏な異国のイメージが続きながらもテーマがはっきり提示されていない(もしくはテーマの解釈にかなりの余地がある)作品でした。
連作としての物語性という点ではもうすこし読者に近づいていってもよいのではないかと思いつつ、このスタンスはかなり連作に合っているのだろう、と個人的には思います。
そして、引用1首目の歌の完成度には感銘を覚えました。
三席
『極夜ごっこ』石川瑞希
踏むたびに氷は割れる眠剤のブリスターパックを割る音で
あたしもそれ飲んでるよ、と告げる声に諦めを諦めた裏返り
次席とかなり迷って三席とさせていただきました。
そのまま胸に刺さるような歌が多くありつつもブラッシュアップの余地を残した歌もいくつか見受けられ、いつかさらに進化したこの連作をもういちど読みたいと感じました。
技術的な面では、引用した2首以外の歌において1首ごとの要素の詰め込みがかなり多い印象だったので、引用歌くらいの流れ方になるとよいのではないかな、と思います。
「極夜ごっこ」というタイトル、かなりよかったです。
色々と書かせていただきましたが、これは藤宮若菜のごく個人的な選評であり、みなさんの好きなように納得のいくように、これからも短歌をつくってほしいです。
好きだった歌(選外より5首)
ほおずきの実はすぐ破けいつまでも死者を越えられない経験値/真朱
花嵐 百年後にもアパートがあってほしいと願うんだろう/塩本抄
自分ではどうにもできん事があり粉末ジュースの鮮やかな色/あきの つき
月が問いかけてくる日は何もせず話を聞くよ 大人だからね/てと
懸命にあなたを追ったこの道が誰かの標になるのだろうか/りのん
(藤宮若菜 @___wknf__ )
以下、入選全作品全文のご紹介です(編集部が追記しました)