【短歌のひみつ】早月くら「言葉とすれ違うために」

今回は歌人早月くらさんの短歌のひみつをおとどけします
短歌マガジン 2024.09.28
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■歌人プロフィール

早月くら(はやつきくら) @k_hayatsuki

2021年夏に短歌を詠みはじめる。短歌同人「絶島」所属。第35回歌壇賞、第9回詩歌トライアスロン三詩型融合部門受賞。窓辺と水辺が好き。

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[短歌のひみつ]

言葉とすれ違うために

   早月くら

 短歌をつくる起点は、目にした情景や降って湧いたように思いついたフレーズ、それに題詠の言葉とさまざまだ。まずはそれを57577のどこかに置いてみる。

   5言葉とすれ違うために77

 今回「短歌のひみつ」として話したかったのは、わたしが短歌をつくるときに眺める“言葉のメモ”について。それはスマートフォンのメモ帳に入っていて、本を読んだり人と話したり、街中で目や耳にした言葉で日々更新されていく。最新の更新は、先ほど読んだマンガから「式日」です。

 収録語数は増えていく一方なので、そこから言葉を探すときはまずざっとスクロールすることになる。この動作が言葉を探す、というよりは言葉とすれ違うようだと感じたことを歌にしながら、話を進めていきたい。

 書き言葉は、特に詩歌の言葉は作者の手を離れてからの飛距離が長いイメージがある。その飛び方はさまざまで、ときには鳥のように、またときには水切りの石のようにわたしの手から遠ざかっていく。“言葉のメモ”に語を入力するとき、その言葉はどんな歌に含まれることになるのかまだわからない。そんな輪郭のあいまいな言葉が、どことなくゆらゆらと飛ぶ蝶のように思えた。

   5言葉とすれ違うためにひとさしゆびで逃がす蝶々

 体感としては、だんだん歌のかたちが見えてくるこれくらいのタイミングで“言葉のメモ”はもっとも活躍する。残された音数でいかに遠くまで飛び、潜り、あるいは鋭角に曲がれるだろう。

 メモには「名詞」「動詞」「そのほか」と分けて音数ごとに単語をまとめている。今回の場合はまず「そのほか」の5音からたどる。

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