第16回毎月短歌・連作部門(選者:森本 有さん)選評発表

ネット月詠「第16回毎月短歌」,連作部門,選者:森本有さんの選評です
短歌マガジン 2024.11.11
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[次世代短歌プレミアム]

(選者の原稿を預かり、編集部で記事化させていただきました)

 皆さんはじめまして、森本有といいます。短歌を始めて5年くらいになります。ご縁あり、連作部門の選をさせていただきました。

 今回は特に私が好きだったものとして2つの連作を「特選」「準特選」としました。

 早速ですが発表します。

特選
 ちょっとしたパーティー/宇佐田灰加

準特選
 おそれ/あひる隊長

■選評

 個別の評の前に感想を書かせてください。 今回選をしていて思ったのは「私は基本的に定型が好きだな」ということです。私が守破離の守の段階にいるからということもありますが、大胆に定型から外れた歌を多用した連作はちょっと選びにくかったです。これは好みの問題なので悪しからず。他の選者さんであれば違う選をすることと思うので、見るのが楽しみです。

 それではお待たせしました、特選と準特選それぞれの評を以下に記します。

特選 ちょっとしたパーティー/宇佐田灰加

 午睡でまどろむときに見るすこし不思議な夢のような、週末の夕方散歩するときに歌う鼻歌のような、ごきげんな連作。好みです。 主体はずっと一人なんですが、ひとりぼっちではなく、かといって孤高というのとも違って親しみを持てて、素敵に自分の機嫌を自分でとっているんですよね。この空気感に惹かれました。それぞれの歌もちゃんと1首で独立できるような強さを持っていて連作としての完成度が高く、迷いなく特選としました。

 2首目、表題作にもなっている1首がいいですね。個人的に1首目はちょっと浮かれすぎな感じがするんですが、ここで連作の方向感をまとめることができています。「わたしは星に住んでる」につなげるところが「上手な人のやつだ」と思いました。

  賑やかにひかりがあふれるちょっとしたパーティーわたしは星に住んでる

準特選 おそれ/あひる隊長

 連作に通底する空気が好きですね。これまでいろいろと傷ついて生きてきたけど、その傷を自然に愛しているというか、それを含めて自分なんだという自分自身に対する受容のような。 連作としてはまだ歌数が足りていない感じ、肉付けが必要な感じがします。この歌たちをコアとした30首くらいの連作になったらぜひ読みたいです。

 1首目の「通気口」がいいですよね。外の世界とつながっていて、そこから空気は入ってくるんだけど、他者は入ってこれない。うまい塩梅に主体の孤独感と強さを表していると思います。

  雨の日にショートケーキを切り分けて探すわたしだけの通気口

 以上です。 普段自分で短歌を作ったり歌集を読んだりするときには「すき」「そこまででもない」くらいのことしか考えていないので、選者としてそれを言語化していく作業はとても刺激的でした。選者を仕事にしている先生方ってすごいんだな~と改めて感じます。 それではまたどこかで。

森本 有(@forest_book_san

***

以下、入選作品全文のご紹介です(編集部が追記しました)

[第16回毎月短歌・連作部門 特選]

ちょっとしたパ-ティー

  宇佐田灰加

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