布野割歩・自選短歌集
本日は布野割歩さんの自選短歌作品をおとどけします
短歌マガジン
2024.12.25
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[次世代短歌プレミアム]
■歌人プロフィール
布野割歩(ふのわりほ) @Honofuwari
京大短歌所属。ネットプリント「石とイルカとイルカのかたちの石」。第六回笹井宏之賞、第十一回現代短歌社賞最終候補。第七回笹井宏之賞永井祐賞。
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[布野割歩・作品集]
自選短歌集
布野割歩
目覚めたらあたりが冬でそういえば昨日も冬だったと思い出す
●REC ぼくがなにも考えないときにカメラが持っている目のしくみ
藤棚へ風は当たってそれからのことは藤棚に委ねられる
思い出せばいいと気づいてそれからのわたしは覚えるようにしている
あなたがあなたふたりでわたしに会いにきてわたしもわたしふたりで待っていた
月光の感触がして菓子折りの薄紙ずっとさわってしまう
向こうからわたしが歩いてきてそれでわたしも歩いていると気づいた
不安という感情がありそれ以外の感情のことは感情と呼ばない
うつむいて足のしびれをやりすごす 生まれ変わったら月になりたい
早足で降りないと昼の歩道橋は住みたくなってしまうからだめ
手を広げて意図を逃がせば一度だけ意図はわたしのほうを振り向く
なんだいたのかと言われてわたしたぶんいなかったんだと思う夕暮れ