第20回毎月短歌・3首連作部門(選者:スズキ皐月さん)選評発表

ネット月詠「第20回毎月短歌」,3首連作部門,選者:スズキ皐月さんの選評です
短歌マガジン 2025.03.16
誰でも

[次世代短歌プレミアム]

(選者の原稿を預かり、編集部で記事化させていただきました)

こんにちは!スズキ皐月です。今月は3首連作部門を担当させていただくことになりました。

3首連作ということで一首一首の良さは当然のこと、 連作としての必然性や面白さを意識してみなさんの作品を読みました。しかし、3首連作って難しいですね。長い連作よりできることは限られていますし。その制約の中で創意工夫を凝らして投稿してくださったみなさん全員に感謝を伝えたいです。

さて、 今回は首席、次席、三席と順番を設けてよかった作品に触れていこうと思います。


  • 首席 『おしゃべり』北野白熊

  • 次席 『恋愛ごっこ』海沢ひかり

  • 三席 『地球征服』瑞波草

首席『おしゃべり』北野白熊

今月の首席は北野白熊さんの『おしゃべり』です。 初読で「この連作は首席次席三席のどこかに入るだろうな」と思ったくらいに完成度の高い連作でした。

  自転車のスイミーぱっと割れるとき半身のままで続くおしゃべり

  嘘をつくコツはほんとを混ぜることメロンソーダのソーダはほんと

  赤すぎるポストが街に馴染んでくたぶん明日は晴れると思う

どの歌も面白いのは当然として、連作にすることで描かれている世界の細部が見えてくる構成になっています。

一首目からは中高生くらいの人々が見えてきて、二首目からはそのおしゃべりの中で嘘を混ぜていること、三首目からは抒情と主体の感情が伝わるようになっています。一首一首が無駄にならない構成のうまさを感じ取れます。 人、感情、街の景すべてを読み手の負担少なく伝えることができているのではないでしょうか。

歌の細部にも触れると、一首目は見立てが素晴らしい歌だと思います。 「自転車」と「スイミー」を合わせることで、画一的な自転車の集団、つまりは学生を想起させます。「半身のままで」も少しの不安を感じさせるユーモアがあります。3 首連作の最初として、読者にインパクトと濃い情報を与える良い歌です。

次席『恋愛ごっこ』海沢ひかり

次席は海沢ひかりさんの『恋愛ごっこ』です。まずタイトルが良くて、この連作にぴったりのタイトルだなぁと思いました。

  永遠に同じ手出してあいこしよパーとパーなら手を繋ごうよ

  愛なんてオセロのように変わりゆく全てのコマを君にあげよう

  しりとりは「好き」「キス」をただ繰り返す狙うは僕のゴール「結婚」

それぞれじゃんけん、オセロ、しりとりをモチーフとして恋愛の話をしています。 受け取った印象として、 「恋愛」をテーマにしている短歌連作はよくある中で、この連作は割と冷静ですよね。 どの歌も相手と自分の接点を狙っている主体の思惑や打算が見えてきます。 恋人同士の面白さというよりは恋人になる手前の駆け引きの面白さを思い出しました。

3 首ともそのテンションで詠まれている印象があるので、この連作もすっと読めて、なおかつ主体のキャラクターが立ってくる良さがあります。

歌単体に触れると、二首目の愛に対するドライな見方と全てのオセロのコマを全部あげちゃう献身的な姿勢のバランスが面白さになっています。この連作の方向性を見出せる一首でもありますよね。

三席『地球征服』瑞波草

三席は瑞波草さんの『地球征服』です。 完全に読み取れている気はしていないのですが、歌い口とスケールの大きいことを詠もうとしている面白さが目を引きました。

  節電と書かれた紙を役員が朝からずっと印刷してる

  やっと春 夏 梅雨 真夏 台風 あ また夏が来て 暖冬ですね

  ぎょっとするような景色の神様は私たちです地球征服

一貫して地球の環境のことが下敷きにあるなと読みました。一首目の「節電」 を主張するために電力を使っている滑稽さ、二首目の近年の日本の夏の長さしつこさを、三首目の地球の姿を思うままに変えてしまった人類の話を、という読みをしました。

一首目で会社のユーモア的な連作かなと予測していましたが、二首目でしっかりと環境の話だと気づくことのできる材料を与えてもらえたのが良かったです。連作としてもキーですが単体でも二首目は面白くて、 多用されるスペースや途中で挟まる「あ」がこの歌では効いていると思いました。

三首目は少し読みブレが起きやすいかなと思いつつ、それまでの歌と合わせて考えると結句の「地球征服」のあとの省略は「地球征服しよう」ではなく「地球征服しました」とかかなという気持ちになりました。

3首連作という制約の強い中で、うまく大きな話ができているのではないでしょうか。

おわりに

今月もかなり迷いながら三作品を選ばせていただきました。どの連作も一首単位では目を引く歌が多くて、全作品を何回か読み込むことになりました。

全体のレベルが高いので最終的にはやはり連作としてのバランスの良さや無理なくどれだけの情報量が込められているかというところで差をつけないと選ぶのが困難だなと気づきました。

それでもどの連作も楽しく読ませてもらいました。ありがとうございました!

以上です。また来月も皆さんの作品を楽しみにしています。ではでは~。

スズキ皐月(@hyousyoku83

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