【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第11回)8月10日〜8月16日
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[短歌日記]
ナイフのように爪先立ちで 第11回
toron* 日記 8月10日〜8月16日
タイトルの同じ歌集をならべれば雨の匂いの濃くなる林
8月10日(土)
今日からお盆休み。午前中に歯医者に行く。きのう夏生さんに「明日の歯医者ではどこを治療されるの?」と訊かれたものの、そういえば何を施されるのか微妙に覚えていないことに気がつく。
「親知らずはもっと後で抜くので」「なんちゃらを削ってから詰めます」「麻酔するのでお昼ごはんの時間はずらした方がいいですね」とかは断片的に覚えているのだが、具体的にどの部分を削ってどこまで治療するのかの記憶がほとんどない……左下の奥だったような気がするが。
いや、おそらく歯医者ではきっちり説明してくれていたはずなので、自分の耳の情報処理能力が低すぎるのだ。学生時代、だいたいこんな感じでしか授業を理解できていなかったので懐かしい……社会に出てからは、けっこう議事録とかメールとかなんらかの文書が残っているパターンが多くて助かっています。
そして歯医者に行って1時間くらい、システマティックに治療してもらう。結局削られた場所は右上奥でした(なんやねん)。
でも、全然痛くなくて逆にびっくりした。今は麻酔の注射をする前に麻酔のクリームを塗布して、注射の痛みのための麻酔もするのだなあ。麻酔の効果が切れてからも、違和感なし。明日もいろいろ予定を入れてしまっていたのでほっとした。
晩ごはん、鶏もも肉ときのこ(霜降りひらたけ、しめじ、えのき)を蒸し焼きにして柚子胡椒味にしたやつ。柚子胡椒、調子にのっていれすぎてちょっと辛かった……。それと白ごはん、キャベツとうす揚げのお味噌汁。白ごはん、冷奴にごま油とキムチをのせる。
きょうは夕方、新しい家族が京都水族館からやってきた。
オオサンショウウオのぬいぐるみのXLサイズ。夏生さんのオリックスの株主優待の特典なのである。……実は去年ももらっていて既に1匹いるのだけれど、京都水族館の水槽の、オイルサーディンのように重なっている彼らを再現したかったので。
スパイスケーキを買って来たので、2匹の分もうすく切り分けて、歓迎会をした。
同じ種類のぬいぐるみだけれど、微妙に顔が違う。先住の方はちょっとへの字口というか、内田百閒みがある顔つきなのだけど、新しく来た方は、どの方向から見てもうすく微笑んでいるように見える。
21時から恋愛短歌同好会のキャス。今回の評、非常に理知的というか、共感の文脈で仕上げていないところが、かなり新しくて良かった。この書き方だとすごく難しかったと思う。川上弘美の『神様』を例にあげて話したところ、解ってくれる参加者がいて嬉しかった。
タイムキーパー能力が冴えていて、ジャスト23時に終わる。明日も休みなのでひさびさにゆっくり湯船につかってから寝た。
8月11日(日)
午前中、夏生さんの車で市役所へ。どういう服で向かうべきなんだ……と、混乱したが、正装(正装?)するのもおかしいので、ユニクロのエアリズムワンピースで。
日曜ということもあって市民課はそこそこ空いていた。が、きょうは本籍を参照するシステムが使えないので、本籍の確認や更新、住民票の写しやマイナンバーの更新も諸々できず、婚姻届は提出してもらっても保留扱いです、と云われる。まじかーー。
こういうのって事前に知るすべとかないのだろうか……一応市役所のホームページも確認してから来たんだが……とはいえ引き返すわけにも行かないので、後日また来ることにして、ひとまず提出。諸々の手続きをしてもらう。
実は本名が「toron*」より読みにくいので、案の定、係の人にずっと間違って呼ばれ続ける。というか、婚姻届けにフリガナをふる欄がないのである。自分も書いている最中「ないんだ……」と意外だった。経験値が貯まってようやく解ることもある。
さっくり手続きが終わって、なんか夏生さんがそれっぽいことを云ったりするかな、と思っていたが、特に何か云ったりはなく……まあでも、ここで「これからもずっと一緒にいようね」とか云うひとだったら、たぶん結婚していなかった気がする。
このひとはわたしが嫌だと感じる部分の琴線になぜか触れてこないというか、いつまで経っても図々しくならない。江國香織に『神様のボート』という長編があるのだが、主人公の葉子はどこにいても「馴染まない」ようにしている。そういう未だに不思議な感じがある。
マイナンバーを更新してもらってクレジットカードや銀行の名義変更を午後にする予定が消えてしまったので、帰宅してゆっくりしていると、母上から「もう今日から〇〇(新しい名字)さんなんですね。なんだかさみしいなあ」とLINEが届いて、さすがにぐっとなった。
ちなみにイベント的なものはほぼ何もしない予定だったのだけど、せっかくなのでいつもよりいいものでも食べようか、ということで天理のフレンチを予約してたりする。
さすがにユニクロは着替えてから、天理市。はじめて来たのだけど、天理教の詰所や教会本部が遠景にあると、そこはかとなく異国(異郷?)感があった。
レストランは石上神宮の傍にあって、その神社で式を挙げたあとに使えるようになってもいるのだけど、その日はかなり空いていた。窓際の席だったので、暗くなってゆくに従って、庭園に灯がともるのがよく見える。
わたしはシャンパン、夏生さんは運転しているのでノンアルの赤いカクテルで乾杯した。コースは旬の夏野菜、とうもろこしや万願寺、丸茄子が使われていて、めちゃめちゃ美味しい……10年くらい前だったら、こういうコースの良さが全然わからなかった(なぜ少しずつ一品ずつ出てくる……コスパ悪い……みたいな)のだけど、ようやく解ってきたかもしれない。丁寧だけど緊張感があるというか、いつもとは違う話ができるような空間の演出になっているのだよね……これも経験値……。
なので、どういう話をしたらいいのかちょっと迷うなあ、と自分も思っていたのだけれど、魚料理(鱧おいしかった)のときに、まあまあ予想していたことだけど、夏生さんが泣いてしまう。
「どうしたん?」
「いや……結婚してくれてありがとう」
と、云うので「ありがとうとか云わなくていいんだよ。これから一緒に人生を創っていくんやし、もっとこうしたい、とかこうなりたいとか、もっといろいろ教えてほしい」と返したら、もっと泣かせてしまった。
その後、3回くらい泣かせてしまうターンがあったけれど、お肉もデザートも素晴らしかった……自分は、記念日は自分も他人も誕生日くらいで充分と思っていた人種だったのだけれど、今日はちゃんと記念日にしておかないとなあ、と思った。
帰る途中で、どうも高校が敷地内でやっているらしい夏祭りの打ち上げ花火が見えた。
すごくできすぎなタイミングでびっくりしたけれど、ずっと覚えていそうなタイミングだった。
8月12日(月)
きのうから一転して現実。また生活をやっていかねばならない。人生。
と、いってもまだ自分などはお盆休みで祝日だけれど、夏生さんはふつーに仕事である。
「行きたくない……」「有休にしたい……」と昨晩の23時くらいまでは云っていたが、昨日の帰宅途中にココカラファインでおやつ用の調理パン(3割引き)を買っていたので、案の定、出社していった。
とはいえ、自分もさすがに今日は動かねばということで、家事。掃除機をかけて床を拭く。洗濯。ベッド用のNクールも洗う。レンジ台と換気扇の油汚れの掃除。シンクをクエン酸スプレーで磨いたり、排水口のパーツをハイターに浸けたり。
そういえば昨夜、Xで結婚したことをポストしたところ、たくさんの方からお祝いメッセージを頂きました。すべてにお返事できてはおりませんが、すべて読ませて頂いております。
また、自分は短歌をはじめる前は、ただの音楽好きなアカウントとして運用していたのだけれど、その頃のフォロワーさんたちからもリプライやDMを頂けてとても嬉しかった。
晩ごはん、冷しゃぶ。きょうはつるむらさき、オクラ、トマトを豚肉とともにめんつゆとかんたん酢につけておいた。えのきとうすあげの味噌汁、白ごはん、小松菜の煮びたし。
小俵さんの歌集『レテ/移動祝祭日』の2周めを読む。
いい歌がたくさんあるということもあるけれど、云いたくなることがたくさん出てくる類の、いい歌集だと思う。例えば、
思春期にチコに冷たくしたことを内省すべきときおもいだす/小俵鱚太『レテ/移動祝祭日』
「内省するとき」ではなく「内省すべきとき」なんだな、とか。
内省している最中に思い出しているのではなく、「内省しないといけないシーンだな」と自覚しつつもしていない。「内省すべきとき」に内省しないで「チコに冷たくしたこと」を代わりに思い出している。
その行為も非常に内省に近くはあるものの、内省のポーズというか代替行為であって、現実を直視することを避けている感じがある……こういう歌がいくつかあって、そのことを早く誰かと話してみたい。
8月13日(火)
きょうは夏生さんと市役所リベンジ。うおーー!