羽水繭・連作「ことほぎ」&自選短歌集

本日は羽水繭さんの書き下ろし連作と自選短歌集をおとどけします
短歌マガジン 2024.11.16
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[次世代短歌プレミアム]

■歌人プロフィール

羽水繭(うすいまゆ) @atreat_m

大阪生まれ大阪育ち
2023年夏のおわりに作歌をはじめる。
うたの日、新聞歌壇へ投稿しています。

***

[連作]

ことほぎ

  羽水繭

眠れない夜を磨いて曇天へ捩じ込んでゆく月の粒子を

天井を抱くようにして目を瞑るまぶたに夢のうかびくるまで

立体の夢が怖くて歯をあてた手首の跡を星に喩える

饒舌にあなたが犬を撫でるとき青みがかってゆく六畳間

問うことをやめてしまってそれからはあなたの声がずっとウクレレ

ほんとうを言おうとすれば水中の発話のようなくるしさだろう

返事ならあなたの欲しい方を言う夜風をおよぐ魚になって

生きていればまた会えるかもしれなくて祈りを椅子に置いて出て行く

過去はいつ燃やしてもいい瓶詰めのアプリコットの蓋にあてる火

感情の果ての湖どの雨もひとの気配にあふれてしまう

雨音にふるえる犬を撫でながら何かをおもいだしそうな指

ちがうから言葉と声は。書き出しの雨はおくれて眼窩へみちる

過去にのみ永遠はあり蛇口からかつてわたしを濡らした驟雨

生活を営んでゆく言葉から抜け出すように眠ったりして

ささやかなことほぎとして真夜中を眠り終えたらおはようと言う

(羽水繭)

***

[羽水繭・作品集]

自選短歌集

   羽水繭

折り紙を二枚一緒に折る舟のどこからずれていたんだろうか

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