【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第30回)12月21日〜12月27日
[次世代短歌プレミアム]
[短歌日記]
ナイフのように爪先立ちで 第30回
toron* 日記 12月21日〜12月27日
飲まれつつ進むしかなくまた冬の玄関に置く蛇の石鹸
12/21(土)
きょうは塔の忘年歌会に参加する。髪を自分史上いちばん短くしてコンタクトをしていなかったこともあり、司会の川本さんに別の参加者と間違えられる。
会場はだいたい30人くらい来ていて、東京から森山緋紗さんや名古屋から近藤さんも来られていて、いつも塔に所属しているのに集まりのときに謎のアウェー感があるので、とてもほっとした。
3時間くらい細かい助詞の使い方などまで短歌の話をして、脳からドーパミンがにじみ出てくる。
懇親会のあとひさびさに二次会に参加して、そちらもめちゃくちゃ楽しかったのだけど、楽しすぎて1年ぶりくらいに終電を逃して、夏生さんに車で迎えに来てもらうなど。
去年も会社の忘年会だったか歓送迎会でほとんど同じシチュエーションになって「もう二度としません!」と云ったものの、ふつーにまたしてしまっているという……。
そして全然怒っているように見えないのに、アドレナリンが出ているのか、いつもよりクリア喋っていて「いやほんとにもう激怒ですよ」という夏生さんがまた見られたのはなんだか良かった。
いや、また迎えに来てもらえたことに感謝しないといけないのだけど、そういうことを思いながら助手席で寝たり起きたりしていた。
12/22(日)
ふつかよい。寝たり起きたりして日中過ごす。
終電を逃すのとふつかよいはいつもセットでついてくる。そして楽しい時間と同じだけの時間を横たわって過ごすのは、いったい何の等価交換をさせられているのか。
いや、途中に記憶もところどころ落としてきているので、あきらかにマイナスである。自己嫌悪。そして自己嫌悪して横たわっていると、ひとはXしか見ることができないのは何故なのか……かつて、仕事でメンタルがおかしくなっていて、一日100ツイートくらいしていた頃を思い出すなど
夏生さんは叔母さんの家で開催されている餅つき大会(!)に行っていて、夕方近くになってから帰ってくる。
夜になって起き上がって、フィギュアスケートの全日本大会の女子のフリースケーティングを見つつ、お土産のお餅を食べるとちゃんと美味しかった。
12/23(月)
まだ全然元気ない。身体は元気だがそれ以外がぜんぶ元気ではない。
どうやら土曜日、スヌードと鹿のブローチを落としてしまっていたことに気がついたのが大きい。
スヌードはめちゃめちゃ気に入っていたやつだし、ブローチは夏生さんとまだ出会ってしばらくした頃にくれたやつだったのだ。
帰りみちに何度か「うう…しにたい…」とつぶやいてしまう。奈良は人口密度が少ないので、そういうつぶやきも特に誰かに拾われずに済んだ。
晩ごはん、鍋キューブ(鶏しお味)に、白菜、えのき、鶏もも肉、うどんなどを入れてめっちゃ簡単な鍋。
自分が元気ない所為なのか、月曜日の仕事はじめだからかその両方なのか、夏生さんも元気がなくなって、ふたりとも部屋に溶けるような感じでしずかになる。
家というのはいつもしずかに浸透圧がはたらいているのだと思う。うれしい、さみしい、くるしい、が濃い方から薄い方へと流れ込んでくる。
12/24(火)
ようやくやや元気になる。いろいろあっても人間生きていかねばならないのだなあ、の境地に到ったというか、やらなければならない日々のタスクがあるというか、クリスマスイブの町の雰囲気に感化されてきたというか。
仕事後に夏生さんへのクリスマスプレゼントの眼鏡が仕上がったらしいので、ならファミリーまで取りに行く。
ならファミリーは近鉄百貨店とイオンが融合されたような施設なのだが、近鉄百貨店の部分は19時に閉まってしまうので、かなり急いで向かう。
しかし19時って閉まるの早くない……平日一生行けない人がいると思うし、一応きょうはイブで1階にディオールとか4℃とかも入っているんだが……。
眼鏡は問題なく受け取れたので、イオンの方で食品売場を物色。
相変わらず野菜が高い。デフォルトで高くなっているのか、正月価格になってきたのかは解らないけど。……ひとまず、週末のイベントのためにレタス、ごまだれなどをカートに入れる。あとKALDIで「みかポン」という和歌山のぽん酢を買う。
イブなのでお惣菜もクリスマスメニューがほとんどで、自分もなんか買って帰るべきだったか、やや悩み……いやでも先日、週末にクリスマスメニューにして、ケーキはなしでって決めたところだしなあ……と、もやっとしながら帰宅。
晩ごはん、夏生さん作の鶏もも肉の柚子胡椒焼き、ミネストローネ、小松菜のナムル、白ごはん。
おかず、追加で買って帰らなくても夏生さんがつくってくれた分で充分だったし、食後に「おまけ」として100円のケーキを用意してくれていたのでほっとした。
自分は食後に食べるケーキは、もうこのくらいの軽さが好きだ。
12/25(水)
年内最後の出社日。今年あまりがっつりデスクを掃除するタイミングがなかったので、自宅からウェスを持ってきて、入念に拭き上げる。自分が拭いていると、両隣の石川さんと岬さんもデスクを拭きだして、なんだかじわじわきてしまった。
数年つかっていなかった筆記用具の類も思い切って処分して、来年のカレンダーを置くといっきに気持ちがすっきりした。
そして整形外科納め。同じく整形外科納めひとが多かったのか、けっこうな込み具合で、帰宅したら21時前だった。
晩ごはん、夏生さん作ちゃんぽん麺。そして夏生さん、明日は3時半起きなのでほとんど入れ違いに寝てしまったので、アマプラでカンバーバッチ主演の『SHERLOCK』を食べながら見る。
一度見たことはあるのだけれど、高殿円の『シャーリー・ホームズ』シリーズを読んでいると、こっちのホームズネタを踏まえている箇所が多くて、この休み中に通してみようと思ったところ、あと1週間で配信終了ということに気がついたのである。なんらかの啓示を無意識で感じ取ったのかもしれない。
ひさしぶりに見たらストーリーをほぼ全く忘れていて、新鮮な感動があった。
カンバーバッチの演技、今見るとまだAIがやっているのかと思わせる非人間的な感じがめちゃめちゃ上手い。
12/26(木)
きょうはテレワーク。残りの社内での残り仕事をぽつぽつ消化。……ただ、ネットワークの調子が悪く、せっかくの在宅なのに余計なストレス負荷がかかっている感じ。
年末に向けてつくっていたToDoリスト、Lifebearのアプリが同期できていなかったみたいなのですべて消える。うわーー。いやでも、今思い返すとけっこう無理めなことも書いてた気がするしな……と、それでも在宅なので、プラス思考になることができるなど。
仕事後、アマプラで引き続き『SHERLOCK』を見る。
日本初放映のときに見ていたはずなのだけど、第2話のトリックなど完全に忘れていて自分にびっくりする。まあ、放映から10年は経ってるしな……しかし、第2話のトリック、脚本を書いたひとは「ノックスの十戒」を知ってるうえでのことかな、と思ったが、そういうことではなさそうだ。
というのも『SHERLOCK』って、トリックとしては実はそこまであざやかなものはなく(むしろトンデモなやつが割とある)、シャーロックのプロファイリング、シャーロックとワトソンとの会話、原作を現代に置き換えた解釈、などの方に重きを置いているのだと思う。
晩ごはん、青パパイヤと豚肉のオイスターソース白菜のシーザーサラダ、山なめの味噌汁、白ごはん。青パパイヤは先週のソムタムの残りを使ったのだけど、こっちの方がまだ食べやすいかな、と思う。ただ、参照したレシピよりけっこう薄く切らないと柔らかくはならないように思った。
今月掲載誌の『短歌研究』『ねむらない樹』が届いた旨のポストをしたものの、『SHERLOCK』と原稿をいったりきたりしていてまだじっくり読めていない。今年中にしっかり読む時間をどこかでとれたら、と思う。
新人賞発表号は読んでいるとすごいエネルギーをもらえて短歌をつくりたい欲求がざわざわしてくる。
12/27(金)
会社のネットワーク、きょうも不調。
仕事はネットワークをだましだまししてひとまず収まった。社内でほとんど収めていたので、問題なかったとはいえあんまりやり切った感がない。
きょうの晩ごはんはクリスマスメニュー。
いや、正確にはクリスマスを名目にした、ちょっといいご飯。ということで別に鶏を焼いたりとかはしない……クリスマスメニューって、わりと冷めやすいメニュー多くないですか……?
シチューとかもありかもなのだけど、でもシチューもやはりスープより冷めやすいというか……つまり、季節を考慮してもうちょっと暖まるものが食べたいのですよね……。
という要望を夏生さんに伝えて協議をした結果、『きのう何食べた?』の小日向さんが自作してくれた牛しゃぶを再現してみることになった。
小日向さんの牛しゃぶは、白出汁と酒でうすく味をつけたものに、牛肉、クレソン、レタス、白ねぎをくぐらせて、ポン酢やごまだれで各自頂く、という感じである。
ただし、小日向さんは「あなたのお家の成城石井」という感じで、けっこうレシピにクレソンが入ることが多く……そして奈良にクレソンが売っているところがなく……これはやはり成城石井に行かないと行けないのか……と、嫌な汗が出はじめていたところ、何とかふだんいっているスーパーでたまたま売られていたのをゲットできた。
そしてそこにかなり良い米沢牛と、江ノ島で買ってきてまだ飲まずにいた「白天狗」というジンでジントニックをつくって乾杯した。メリークリスマス……!
良い牛肉はアクの出方も上品だと思う。ジルベールが作中で感動していたことも頷ける美味しさで、レタスひと玉が牛と一緒にたちまちになくなる。
クリスマスがかんぜんに美味しいものを食べる日に成り代わってしまったが、充実度は高かったので、来年もそんな日になったらいいなと思う。
玄関のクリスマスの置物を片付けて、いつも行っている美容院でもらった、来年の干支かたちの石鹸に置き換えてからねむる。
(つづく)
■歌人プロフィール
toron*(とろん) @toron0503
大阪府豊中市生まれ。うたの日育ち。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。第1歌集『イマジナシオン』(書肆侃侃房)。
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