【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第47回)4月19日〜4月25日

歌人toron*さんの短歌日記をおとどけします
短歌マガジン 2025.05.01
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[短歌日記]

ナイフのように爪先立ちで 第47回

toron* 日記 4月19日〜4月25日

  いくつものわたしを埋めて白猫の化身のように咲く沈丁花

4/19(土)

 起きたらフリマアプリに出品していたKindle Paperwhiteが売れていたので、発送しに行く。

 フリマアプリの出品もはじめてだったし、そういえば先日はじめて株を買ったりもしたのだけど、意外とやってみたらできるものだな、とも思う。

  カツカレーのカツをスプーンで切るときのやればできるはこんな感じか/小俵鱚太『レテ/移動祝祭日』

 午後からはpodcastを聴きながら衣替えをする。

 朝日新聞社がやっている『好書好日』という本や作家紹介のpodcastにさいきんハマっていて、よく家事をしながら聴いている。

 すると唐突に『天才による凡人のための短歌教室』が紹介されて驚いた。

 ブックデザイナーの井上新八さんは、この本に出会って本の通りに毎日一首つくっているらしい(つくった短歌については紹介されていなかったが)。

 「『メモをとらない』というのはメモ魔なのでまだできてないのだけど、メモに書かなかったことの方が実は言いたかったことなのだと解ってきた」ともコメントされていた。

 わたしはメモを取らないのは無理だな……だいたいメモに200くらいの単語をストックしてあるし……。

 ただそれは、言葉からイメージを受けて短歌のかたちにする、ということと、自分のなかの言いたいことを短歌のかたちにする、という、つくり方の違いなのだとも思う。

 晩ごはん、冷凍のしょうが餃子を焼くだけ、冷ややっこにトマトとラー油をかけたの。

 あんまり労働しない一日であったが、無性にビールが飲みたかったので、350ミリの缶をひとり1本飲む。

 ビールは美味しかったけれど、ひさしぶりだったためか、夏生さんは飲んでから3時間くらい昏倒していた。

4/20(日)

 きのうもそんな片鱗があったが、きょうもうっすらやる気がない。

 ことあるごとに横たわって過ごす。寝たり起きたりしていたら、夏生さんが掃除機をかけてくれたのでありがたかった。

 夕方くらいに復活して、常備菜をつくる。もやしナムル、ささみといんげんの梅和え、切干大根のサラダ、味玉……うーーん、さいきんラインナップが固定化してきてしまった……気がつけば1時間以内につくれるラインナップで回してしまっているので、どこかで打開したさがある。

 晩ごはんは、ハウスのキットを使ってミートソースのグラタン。このキット、ホワイトソースの方のキットでも牛乳が要ったのだけど、ミートソースの方にも牛乳が要るらしい。……なるほど、けっこうまろやかな仕上がりになる。

 それとキャベツとベーコンのお味噌汁、菜の花とプチトマトの白出汁漬け。

 結局終日やる気が全然ないままだった。しかし一日中雨で気圧が低かったことも関係あるのかもしれない。「頭痛ーる」というアプリを入れてみる。

4/21(月)

 出社。午前中、触れるものすべてを怨嗟の炎で焼き払いたい気持ちというか、謎の怒りや苛立たしさを抱えつつ仕事。ただこの苛立ちがなぜ急に湧いてきたのかわよく解らず……午後になったら「おれはいったいなにを…?」みたいに我にかえって黙々と仕事をした。

 寒暖の差の所為だろうか……でもさいきん、やらないといけないこと、やりたいことの区別があまりできていなかったり、脳内で予定が整理されていない感じがある。

 ちゃんとせねば、とは思うのだけど余裕がないし、周りのひとは自分より時間も気持ちも余裕があるように感じてしまう。

 晩ごはん、夏生さん作のチャプチェ、卵と小松菜のスープ、常備菜いろいろ。

 夏生さん、ここしばらくずっとポケモンSVは土日だけだったのだけど、追加コンテンツをクリアしてから、もっとやり込みたい(やり込まなければ?)闘志が湧いてきたようで、食後にスマホをいじったり、漫然と横になっている時間がなくなった。速やかに入浴し、フィットボクシングをしてからプロテインを飲み、寝るまでの1時間、ポケモンに勤しんでいる……モチベーションで人はここまで変われるものなのだなあ……。

4/22(火)

 出社。黒の組織にGWの有給申請を出してからまったく反応がないので、ちゃんと受理されているのか解らずもやもやする。

「GW中はなるべくシェルター内で作業するように」という連絡をしれっと無視して申請を出してしまったというのもあるが……しかし、シェルター内でもう8年くらい作業していないので、急に行ってもできる作業がないだろう……。 

 晩ごはん、夏生さん作、木須肉、味噌汁(具がめっちゃ少なかったことは覚えている)常備菜のもやしナムル、ささみといんげんの塩麹和えなど。

 GW、夏生さんは祝日もふつうに仕事なので、特に何処かに行く予定はないのだけど、世界最大規模(「最大」ではなく「最大規模」なところがポイントである)という触れ込みの橿原の無印良品でも行ってみようか、という話をする。

4/23(水)

 きょうはテレワーク。先週は出勤時刻ぎりぎりに起きてしまったので、気を引き締めまくって7時には起きる……いつも6時前には起きているのに、スイッチがオフになると気を引き締めまくっても7時起床である。

 お昼休みに図書館から借りてきていた藤野可織『ピエタとトランジ』を読む。

 面白い。もっとミステリっぽい話かと思っていたがそんなことはなかった。トランジは探偵ではあるが九十九十九のように一瞬で真相がわかってしまうメタ探偵なのである。

 すごい勢いで人が死んでゆくのだけど、不思議と暗くはない。『少女終末旅行』をもっとポップにするとこんな感じかもしれない。

 途中、タイトルは伏せられたままなのだけど、トランジがJ.G.バラードの『結晶世界』を読んでいるのはとても暗示的だった。

 晩ごはん、鶏むね肉のスライスを塩麹につけておいたものを温野菜と一緒に蒸したもの。野菜が無性にたくさん食べたくなったのである。それと、キャベツとベーコンのお味噌汁。ピーマンとさつまあげのきんぴらなど。

 食後にたんたん拍子の東京文フリ用の新刊の引用歌の確認作業。

 上がってきたゲラの分を全部確認していたら2時間くらいかかった。思っていた以上に時間がかかったし、途中、疲れすぎて何回か「うわあああ……」と叫んだり歩き回ったりした。

 ちなみにエノモは30分くらいで確認を終えたらしいので、まじかよすげえな……となる。疲労困憊しつつも、シャワーを浴びてから横になる。

4/24(木)

 うわーーっとなりながら塔の全国大会の参加費を払う。

 きのう夏生さんに「全国大会のお金もう払った? 自分は払ったけど」と云われたのである。

だいたいこういうシチュエーションでは、わたしの方が先に払って、〆切を忘れている夏生さんに声をかけるのがデフォルトだったので、しっかりせねばという気持ちがつよくなる。

 夏生さんは今週、ポケモンSVのおかげでめっちゃ生活に張りが出ているからというのもあるだろうが……。

 それにしても全日程すべて参加にしたので楽しみではあるのだけど、懐がすっと寒くなる。5月のお金のいなくなり方はなかなかすさまじいものがある。 

 夏生さん作、マルちゃんのちゃんぽん麺。野菜がたっぷり食べられて美味しかった。

 引き続き、たんたん拍子新刊の原稿の確認作業。

 今回、評が多いので引用歌以外にも確認する箇所がまあまあ多い。

4/25(金)

 黒の組織から返信がないので、とりあえずGWの有休申請は問題なくおりたようである。ひとまず良かった。

 頭の中がわりと散らかっていて、GW開始で浮かれる気持ちと、やらねばならないことがありすぎて焦る気持ちがきっちり同居している。早特21ワイドで、塔の全国大会のための新幹線の往復も予約しなければ。

 晩ごはん、夏生さん作の鮭のちゃんちゃん焼き。

 個人的にはもう少し味噌が甘くてバターも多い方が好きなのだけど、たぶん夏生さん的にはそんなに甘い味が好きではないようなので悩ましい……。

 藤野可織『ピエタとトランジ』読了。わりとかるくSFとしても読めるのだけど、通奏低音としてずっと「女がどう生きるのか」を問いつづけている話でもあった。

(つづく)

■歌人プロフィール

toron*(とろん) @toron0503

大阪府豊中市生まれ。うたの日育ち。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。第1歌集『イマジナシオン』(書肆侃侃房)。

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