【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第27回)11月30日〜12月6日
[次世代短歌プレミアム]
[短歌日記]
ナイフのように爪先立ちで 第27回
toron* 日記 11月30日〜12月6日
生まれたいから生まれただけのはずなのに浜松餃子に羽根などつけて
11/30(土)
京都へ読書会に行く。題材は「『薄明穹』『鏡の私小説』を読む」で、司会は黒瀬珂瀾さん。
ちなみにネットから申し込んだのだけど、入力欄が「姓」「名」に分かれていて、カナを振る必要があったので、必然的に本名での入力を余儀なくさせられてしまった。なので受付でも、本名を名乗って入る。
会場は30人くらいで、午前中も別の読書会があったので、そのままスライドして参加している方も多そうだった。席もほぼ埋まっていて、最前列しか空いておらず、しかも会場で待ち合わせした山本夏子さんがまだ来ていなかったので、謎の冷や汗をかきつつ着席する。
「ちょっと着いたなら連絡してよ、え、もう連絡した? ほんまや、今DMきたわ」
と山本さんが2分前くらいに到着し、ほっとしたがなぜか真うしろの席に座ってしまったので、最前列にひとりで心細く座る……。
登壇している3名は全員ふだんから人前で話すことの多い職業だからか、話し方や声量もとてもちょうど良かった。栗原さんの第1歌集刊行は2005年で、ジェンダーの違和をはじめて詠った歌人とも紹介されていた。
「クィアベイティング」ということばもはじめて知る。自分はカンバーバッチ主演の『SHERLOCK』が好きだったけれど、そのために炎上していたことは知らず……ワトソンが結婚するのも原作通りなのだが、それを定義する言葉が現代にできてしまって引き起こされてしまった現象であるように感じた。
そういえば言葉に関してだけれども、司会の黒瀬さんは「最近はエシカルな読み方が……」ということをコメントされていて、エシカルってなんとなく、コンビニで袋いりません的な概念なのかとふんわり思っていたので、そういう使われ方が意外だった。
ただ、エシカルの本来の意味って「倫理的な」「道徳的な」なので、袋いりません概念の方がちょっと違うというか名詞化されて使われていて、本来の意味から遠ざかっているのだろうな、とも思った。
質疑応答の際、黒瀬さんが会場内の名簿を見ながら当てていったので、またもや謎の冷や汗が出まくっていたのだけれど、歌人を中心に当てていったこともあり、本名で受付したため無事に回避できた。
懇親会の方には出ずに、本屋だけ寄り道して帰る。『おおきく振りかぶって』と『ブルーピリオド』の新刊が出ていたので買う。
晩ごはんはキムチ鍋。鍋ポーションを使ってつくったら出汁の味と塩分がけっこう濃いので記載より多めに希釈したら、塩気はちょうど良くなったもののキムチの味が見つけにくくなってしまった。器の方に生のキムチを足して食べた。
『おおきく振りかぶって』37巻、新入生がいっきに入ってきて作中時間がようやく少し進んだ感じがある。でもキャラクターがぼんやりしてきた頃、また新刊が出るのだろうな……。
12/1(日)
夏生さんはおばあちゃんのお見舞いに今週も三河へ。わたしは午前中は図書館へ。
連作の資料を返したあと長野まゆみ『銀河の通信所』、黒瀬珂瀾『蓮喰ひ人の日記』を借りる。きのうの批評会でそういえば黒瀬さんの歌集、『黒曜宮』しか読んだことなかったな……と思ったので。
皮装丁を思わせる手触りでブルーブラック一色のシンプルな装丁。しかもソフトカバーで柔らかい。 自分がもし歌集を出すとしたら、わりとこういう感じが理想な気がする。
ソフトカバーの方が読みやすいし、こういう装丁は汚れにくい。自分が移動中に読むことが多いからだとは思うが、汚れにくさや軽さを主眼に考えてしまう。
装丁は内容以外にも眼でも楽しめる部分だとは思うのだが、自分としてはもっとフランクに外に持ち出してページをひらいてほしい気持ちもある。
帰宅してからは掃除と常備菜づくり。晩ごはんは、ガパオライス、長芋のから揚げ。かぼちゃの煮つけ。
夏生さん、19時過ぎに帰宅。お見舞いに行った後、入れ違いでおばあちゃんが亡くなったらしく、明日から再び三河へ行くとのこと。
わたしも行った方がいいのか相談したが、ごく身内だけでやるらしく奈良に残ることに。
12/2(月)
今夜は夏生さんが不在なので、手羽先の水炊きとビール。具は手羽先の他、スーパーで売っている鍋用のカット野菜1袋、〆は4割引きのうどんなど。
手羽先の水炊きは『きのう何食べた?』で見てから気になっていたのだけど、夏生さんが煮た手羽先があまり好きではないため、こういう機会にしか食べる機会がなく……ちなみにぽん酢と柚子胡椒で食べたのだけど、美味しかった。鳥の骨からいい出汁がたくさん出ていて、〆のうどんも良かった。
ただ、『きのう何食べた?』の作中ではさらっと「食べにくいけど美味しいね」というケンジのセリフがあるのみだけれど、けっこう食べにくかったし、手で食べると箸を持つ動作の前に必ず手を拭くターンが要るのも、忙しい感じである。
あと、手羽先を買うことがほとんどなかったので今まで不勉強だったのだが、手羽先の値段って、手羽元や手羽中の倍くらいするのだな……それとも、たまたまスーパーに行ったタイミングがそうだっただけなのだろうか。
食べながらぼんやり『ゆるキャン△』の3期を見る。
『ゆるキャン△』、2期までと映画版を見たのになぜか見ていなかったのである。確かにゆるいけどめっちゃ丁寧なつくり。
夏生さんから20時ごろに連絡。あした帰ってくる予定だったけど、片づけなどがあるために水曜になるということだった。
気楽ではあるが、ひとりでなんやかんやこなしているのは「暮らし」というより「作業」感が出てしまう。
12/3(火)
仕事終わりに整形外科へ。今回はひさびさに志摩遼平似の先生に当たる。
この先生のほぐし方がいちばん揉み返しが少なくていい気がする。でもシステム的に指名などはできないので残念……。
晩ごはん、遅くなったし今日もひとりなので簡単に。
アボカドと生ハムをトーストにのっけたやつ。インスタントのトマトスープ、つくり置きのわさび菜ナムル。
夏生さんがアボカドが好きではないので、これもふだんはあまり食卓にあがらないメニュー。
寝る前に筆名に関するポストやそれに関する周辺ポストを読んでしまう。
内容的に自分の筆名もめっちゃ該当する感じだったのだけど……そもそも、X上での議論は不毛だと思っていることもあり、140文字の枠内に収まるように自分の感情を削ったり云い換えたりできるほど、怒りで頭も冴えていないし、逆に自分の筆名で自虐したり、逆に由来を語ったりするような感情にもならなくてなんとなく悶々としてしまう。
別にこんなこと悶々とする必要すらなくて、夏生さんと会話のなかで出せばそれなりにすっきりしてしまいそうな気もするのだけれど、いろいろとままならない。
蜜柑を食べて寝る。
12/4(水)
めっちゃひさしぶりのテレワーク。出社ぎりぎりまでベッドにいて、テレワークの恩恵を甘受した。昼も昼ごはんを食べずに寝た。
しかし、ひさびさにテレワークをしてみると、昼間ってけっこう気温が上がるのだな……日中17℃だと、さすがに暖房はいらない。
去年、冬の装備がぜんぜん間に合わかったということもあるが、今年の方が断然過ごしやすい。かたつむりも活発(かたつむりなりに)動いている。
夏生さん、17時ごろに帰宅。お土産に、浜松餃子、スガキヤの味噌煮込みうどん、関東限定どん兵衛、柚子などいろいろ買ってきてくれた。
晩ごはん、お土産の浜松餃子焼いただけ。かぼちゃの煮つけ、豆乳と豆腐のスープ。柿のサラダ。
柿と生ハムとパプリカをりんごドレッシングで和えて、サワークリームとパクチーを散らしてみた。これは割とフィーリングでつくったのだけど上手くいった。
浜松餃子は白菜の代わりにキャベツが入っているらしい。実家の餃子は白菜の代わりにキャベツだったので、そうかあれは浜松餃子だったのか……両親ともども大阪生まれだが。
夏生さん、月曜の晩くらいから歯なのか顔なのかわからない部位が痛いらしい。家に帰ってきてからだいぶましになったらしいが、やはり疲れとストレスなんだろうか……身内の葬儀はエネルギーを持っていかれてしまうし、日曜から愛知と奈良を往復してたら、疲労困憊だろうし……。
夏生さんが早めに寝たあと、リビングで恋愛短歌同好会の自分の担当部分の評を書く。
12/5(木)
夏生さん、引きつづき歯なのか顔なのか解らない部位が痛いらしい。
夏生さんは知覚過敏だと云っているが、先週歯医者に行ったところで虫歯もチェックしてもらっていたので、顔面神経痛じゃないのか、とわたしと意見が割れる。
しばらくネットで症状を検索したりしていたが、あまりどれもピンと来ず、結局土曜の朝にひとまず歯医者に行くことに。
しかし自分で云っておいてあれだが、顔面神経痛の方が症状が深刻なので、そうでない方がいいな、とも思う。とはいえ、知覚過敏もすぐに治るものではないので心配だが……。
そして土曜は実は高校の天文部のメンバーで、兵庫の佐用町まで行く予定にしていて、夏生さんも参加するのだけど、大丈夫なのだろうか。これ行けるやつなのか。
晩ごはん、パンガシウスのホイル焼き、豆苗のサラダ、鶏ひき肉となめこのお味噌汁、白ごはん。
パンガシウス、淡白だけど味付けを淡白にすると川魚の風味がつよく出る感じ。こんどはトマトソースとかガーリック系の味にしてみたい。
好きなブロガーさんが『ずっとやりたかったことを、やりなさい』という本で創作をする人向けのワークを紹介していて気になっている。
毎朝起きた直後に、頭に浮かんだことを何でもいいからノートに3ページ分書く「モーニング・ページ」というワークである。
めちゃめちゃざっくり云うと、これが「脳の排水」になって、左脳を静かにさせてアイディアを湧きやすくさせるらしい……普段ふつーに生活していても左脳うるさい勢なので、とりあえず原本を早速クリックで買って、該当の箇所を読む。
A4のノートに内容がなんでも良いとしても3ページ書くのはけっこうな時間がかかる気がするし、たとえ30分で書けるとしてもそのためには5時に起きないと出社に差し障るので、ハードルが最初から高い……。
いやでも、そうやって自分に対して「できない」言い訳を取り払っていくことも必要だと本書に書いてあったので、ひとまずやってみようと思う。
12/6(金)
5時起床。きのうの決意通りにモーニング・ページに取り組む。30分かけてノート1ページの3分の2くらいは埋められた。……3ページ、めちゃめちゃたいへんだと思う。でも、初回なのにすっきりした感じがある。
旅行中にはさすがにできるか解らないが、できない日があっても続けたい。内容を読み返す必要がない、ということも気が楽だ。
『蓮喰ひ人の日記』読了。
黒瀬さんのイギリス滞在時の短歌日記で、滞在中に第一子誕生、3・11、海を挟んで向かい側のリビアでの内戦勃発など真顔になる出来事が慌ただしく訪れている。
しかし、そんな真顔にならざるを得ない日々の中、赤子のうんこの歌がめちゃめちゃたくさんおさめられている……たぶん、意図的にやっていて、社会的な動静と日常が上手くまじりあっていると思う。
そういえば歌人の山田航さんは、糞尿の歌を収集している、ということをYouTubeで云っていたが、この歌集からもたくさん収集されているのだろうか。
リビア内戦で思い出したが、ここ数日の韓国のニュースに気持ちがざわざわする。
最近の斎藤劇場の一連のニュースなどのこともあり、ネット由来のニュースをなんとなくそのまま受け入れ難く感じてしまう。
『蓮喰ひ人の日記』でリビア・ウォーはイギリス国内で大きく騒がれていたらしいが、同じく海を挟んで向かい側の国の日本の報道には、そこまでの熱量を感じない。
晩ごはんは夏生さん作で親子丼。
夏生さん、歯なのか顔なのか解らない部位の謎の痛みはほぼなくなったらしい。なんだかよくわからないけど、疲労とストレスではあったのか。とりあえず良かった。
でも結局、今週の移動の疲労がそこまでとれていないらしく、はやめに寝てしまう。
あしたから兵庫の佐用町まで旅行する予定なのに大丈夫なのか……まあ、昼過ぎに出発なので、そこから準備しても間に合うとは思うが……。
とりあえず、自分の方でクーラーボックスや星座観測用の毛布を出したり、双眼鏡のチェックを済ませておく。
(つづく)
toron*さんクラス「短歌投稿のコツ」シーズン2、はじまります
■歌人プロフィール
toron*(とろん) @toron0503
大阪府豊中市生まれ。うたの日育ち。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。第1歌集『イマジナシオン』(書肆侃侃房)。
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