【短歌のひみつ】永井駿「ジョン・キーツの手紙」

今回は歌人永井駿さんの短歌のひみつをおとどけします
短歌マガジン 2024.10.03
読者限定

[次世代短歌プレミアム]

■歌人プロフィール

永井駿(ながいしゅん) @longmemo_tanka

塔短歌会、同人「△」「号外」所属。
渋谷ヒカリエ八階「渋谷○○書店」内にて「渋谷Longbooks」運営。
「長井めも」名義を経て、2023年より現名義。
2021年東京歌壇年間賞。第69回角川短歌賞佳作。
趣味は料理。好きな食材は赤味噌。

***

[短歌のひみつ]

ジョン・キーツの手紙

   永井駿

 今から200年以上前、詩人ジョン・キーツが弟に宛てた手紙に「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉が出てくる。

<特に文学において、人に偉業を成し遂げしむるもの、シェイクスピアが桁外れに有していたもの――それがネガティブ・ケイパビリティ、短気に事実や理由を求めることなく、不確かさや、不可解なことや、疑惑ある状態の中に人が留まることが出来る時に見出されるものである>
Wikipedia ネガティヴ・ケイパビリティ より引用

 ジョン・キーツは、劇作家であるシェイクスピアが桁外れに有していたものとしてこれを書き起こしている。そう書かれるとすごく特別な能力のように思えてしまうが、わたしはそうは思わない。なぜなら、読み手として一度は味わうであろう「どうしてか分からないけれど胸に来る」という経験は、この能力そのものだと思うからだ。

 ところで。

 わたしは、なぜ短歌を作るのだろう。

 きっかけはコロナ禍による趣味探しだった。旧Twitterでアカウントを作り、短歌投稿サイト「うたの日」のゲーム性を大いに楽しんだ。躍起になって点数を取る技術を磨いたが、それが自分にとって「点数を取る技術」以外の何でもなかったことに気がついた時、ふとそう思ったのだった。

 「共感」は、創作にとって最も陥りやすい罠ではないか。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、721文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第24回)11月...
読者限定
羽水繭・連作「ことほぎ」&自選短歌集
読者限定
【独立一首短歌集】古野通「深皿」&自選短歌集
読者限定
【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第23回)11月...
誰でも
【短歌のひみつ】渡邊新月「短歌と漢語について」
読者限定
【連作】久久カナ「痛みの話」
読者限定
第16回毎月短歌・連作部門(選者:森本 有さん)選評発表
誰でも
【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第22回)10月...