【短歌のひみつ】永井駿「ジョン・キーツの手紙」
[次世代短歌プレミアム]
■歌人プロフィール
永井駿(ながいしゅん) @longmemo_tanka
塔短歌会、同人「△」「号外」所属。
渋谷ヒカリエ八階「渋谷○○書店」内にて「渋谷Longbooks」運営。
「長井めも」名義を経て、2023年より現名義。
2021年東京歌壇年間賞。第69回角川短歌賞佳作。
趣味は料理。好きな食材は赤味噌。
[短歌のひみつ]
ジョン・キーツの手紙
永井駿
今から200年以上前、詩人ジョン・キーツが弟に宛てた手紙に「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉が出てくる。
<特に文学において、人に偉業を成し遂げしむるもの、シェイクスピアが桁外れに有していたもの――それがネガティブ・ケイパビリティ、短気に事実や理由を求めることなく、不確かさや、不可解なことや、疑惑ある状態の中に人が留まることが出来る時に見出されるものである>
ジョン・キーツは、劇作家であるシェイクスピアが桁外れに有していたものとしてこれを書き起こしている。そう書かれるとすごく特別な能力のように思えてしまうが、わたしはそうは思わない。なぜなら、読み手として一度は味わうであろう「どうしてか分からないけれど胸に来る」という経験は、この能力そのものだと思うからだ。
ところで。
わたしは、なぜ短歌を作るのだろう。
きっかけはコロナ禍による趣味探しだった。旧Twitterでアカウントを作り、短歌投稿サイト「うたの日」のゲーム性を大いに楽しんだ。躍起になって点数を取る技術を磨いたが、それが自分にとって「点数を取る技術」以外の何でもなかったことに気がついた時、ふとそう思ったのだった。
「共感」は、創作にとって最も陥りやすい罠ではないか。