【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第39回)2月22日〜2月28日
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[短歌日記]
ナイフのように爪先立ちで 第39回
toron* 日記 2月22日〜2月28日
まだ雪のくすぶる出窓かんたんにこころは薄着になりたがるけど
2/22(土)
三連休初日。きょうは勇ちゃん、羊子さん、茉莉花さんたちと伊賀のもくもくファームへ一泊旅行。
もくもくファームは、牧場や農園に併設されている宿泊施設。4人用のコテージを借りたので、けっこうゆったり泊まれそう。
ただ、こんどこそこれで最後だと思われる最強寒波が上陸しているので、どうも伊賀らへんは雪予報が出ている……道路の状態が心配である。
天理でピックアップしてもらって、本店の天スタを食べてから伊賀方面に出発。ちなみに「天スタ」というのは「天理スタミナラーメン」の略称である。奈良に住んで2年で、最寄りの駅前に2店舗もあるというのに未だに食べたことがなく、ようやくである。
天スタは何風、というのがちょっとあてはまらない感じ……塩ベースのスープに豚バラ、ニラ、白菜がたっぷり入っていて、にんにくが効いている。それでいてしつこくなくて、鍋の〆に入れるラーメンに近い感じがした。
運転は勇ちゃんと茉莉花さんが交代でしてくれるので、わたしと羊子さんは後部座席で荷物とともにちまっと収まっている。茉莉花さんチョイスの音楽……HEY-SMITH、ENTH、WANIMA、RIZEなど、ライブに行ったらモッシュ激しめなバンドの曲が車内にうすくかかっている。
奈良と三重の県境の山村(夏生さんの地元付近でもある)あたりで、雪が舞ってきた。
「予報通りやね。でもこのタイミングやと道は凍結しないんとちゃう」
と、羊子さんが云う通り、わりとすぐに伊賀に着くことができた。そもそも奈良から伊賀は車で40分くらいなのでめっちゃ行きやすい。ぶっちゃけぼんやりする時間もそんなになかった。
しかし、道は凍結していなかったものの、もくもくファームに着いたら「これから積もらせるぜ!」といった感じの雪がどさどさ降っていた。なぜか傘を持ってきていなくて、かつキャリーで来ていた茉莉花さんなどは全身で雪を感じることを余儀なくされていた。
チェックインして、とりあえず売店でアイスを食べる勇ちゃんとわたしを、羊子さんと茉莉花さんが信じられないものを見るような眼で見ていた。……そう。雪のことばかり描写しているが、きょうの体感温度は-2℃だったりする。
このあと、指が固まって開かなくなって、茉莉花さんからポータブルカイロを借りました……でも、めちゃめちゃ美味しかった。生クリームとジェラートのいいとこどりのような、濃厚だけれどしつこくない感じ。明日もう一度食べたい。
しかし底冷えのする寒さは晩ごはんを食べて、温泉に入るまでけっこう長く続いた……そういえば温泉は内湯より、露天風呂の数が多くて、こちらも寒いなか全部入りました。
コテージに帰って、軽く飲みながら、おそらく学生以来ぶりに大富豪をする。わたしと勇ちゃんは、学生時代暇さえあれば大富豪をしていた一時期がある(なぜ……)ので、かなりヒートアップしたが、羊子さんと茉莉花さんはルールを既に忘れたらしく、圧倒的な温度差を感じた。さびしい、自分はもうあと20回はできた。
勇ちゃんもおそらくそんな感じであったが、旅行に来てふたりで大富豪しているのはさらにさびしいのでやむを得ない。
飲みながら、ふいにMBTIの話になる。
「全員タイプちがうんやない? わたし『建築家』なんやけど、全人口で2%くらいしかいないらしいで」
と羊子さんが云ったのだけど、わたしも「建築家」タイプだったので、びっくりする。いやこの場に既にふたりいてもうてるけど、ほんまに2%なのか……?
でもそういえば今まで意識したことがなかったけれど、意外と羊子さんと共通点が多いことに気が付く。
お互いにTodoリスト大好き。効率厨。茉莉花さんと勇ちゃんがキャリーとサブバックに荷物を詰めてきたのに対して、わたしたちはお互いにNordaceのリュックひとつにまとめてきた。趣味が高じて副収入を得ている、など……意外と旅行にきてはじめて気がついたところかもしれない。
ちなみに、勇ちゃんは「提唱者」、茉莉花さんは「仲介者」でした。
その他、いろいろ推しの舞台の話などもしていたけれど、0時前にさくっと切り上げて速やかに寝る体制にできるあたり、全員もう10代ではないな、と実感するなど。明日は6時過ぎに起きて、しいたけハウスを見学に行くので楽しみである。
2/23(日)
6時半に起きる。茉莉花さんは朝が弱いとのことで、3人で原木しいたけのハウスの見学ツアーに参加する。原木しいたけ、たまに奈良の八百屋にもならんでいたりするけれど、菌床しいたけの3分の1しかとれず、収穫にも1年以上かかるとのことらしい。値段が全然ちがうことに納得する。
原木しいたけを各自1本ずつ採らせてもらったのだけど、手のひらの上でずっしりと密度を感じる
食堂で茉莉花さんと合流して、朝食ビュッフェに。米やパン、味噌、ハム、ソーセージ、卵、豆腐などは施設内でつくっているようだった。
きのうも感じたのだけど、お味噌汁が美味しい……あとおからサラダもとても美味しくて、おからといったら出汁で炊く、という固定観念が覆された。これは帰ったらぜひ家でも試してみたい。
きょうは森林公園でも寄ってから帰るか、という話をしていたのだけれど、きのう雪で施設全体を見れていなかったことが判明したので、牧場方面などをゆっくり見てからお土産などを飼って帰ることに。
牧場のポニー、青森で見た人懐こいポニーのことが念頭にあったのだけど、ちょうど小さい人たちとのふれあいタイムのイベントをやっていて、絶賛お仕事中であった。終わるまで待っていたのだけど、仕事終わりでお疲れだったようで、あまりファンサしてもらえず残念……。
お土産、自分は金額と照らし合わせつつまあまあ賢く買えた気がする……いやでも、みんなそんな感じかな。羊子さんも昨日の時点では「このハムお土産でも売ってるやろか……欲しい」などことあるごとに真顔で云っていたのだけど、籠の中身はかなり現実的な量だった。
施設内はそんなに広くないのけれど、牧場やお土産をゆっくり見たり、足湯につかったり、再びアイスを食べたりしているとあっという間に14時前になって、車で離脱……圧倒的な満足感。
雪はこの時点ではほぼ溶けていて、道の凍結もなくスムーズだった。ちなみに山を越える際にはピクミンブルームを立ち上げて、無事に山ピクミンをゲットできた。
天理まで送ってもらって、わたしだけ近鉄で奈良方面に。
そして帰宅すると、なんと夏生さんが電気もエアコンもつけずにリビングに座って、グラノーラを食べ終わったところだった。
寒くないのか……ってゆーか、セルフネグレクトしてんのか……? と訊いたら「してないです……」とのことだったので、それを信じて晩ごはんをつくる。
お土産に買ってきた燻製ベーコンをじっくり焼いて、フライパンに卵を落とす。それをご飯にのせてベーコンエッグ丼にした。
めちゃめちゃシンプルな料理なのにベーコンの旨味が……ちなみに燻製ベーコンでベーコンエッグをつくったのは石村まいさんの『パリで風邪をひいた』収録のエッセイのベーコンエッグに影響されたということもある。
クラフトビールもあける。明日も休みで良かった……意外と何かあったりするかな、と危惧していたところもあったのだけど、いい意味で何もなく、スムーズな旅行だった。個人的にもまた行ってみたい……。
2/24(月)
朝起きたらうすく雪が積もっていた。
きょうは高校の頃の天文部のメンバーで、ミナミでランチ。
おそらく自分のチョイスでは来る機会はなかっただろうと思われる「アクアリウムカフェ」という場所に集合する。水槽で各テーブルを仕切っていて半個室にしている感じ。
こういう場所の水槽って、やはり店員さんが世話をするのではなくて、それ専門の業者にメンテしてもらっているのだろうか。
クマノミがけっこういたのだけど、イソギンチャクと戯れていて、意外とここ最近行った水族館でこの光景を見ていなかったので、ちょっと良かった。ハリセンボンが水槽にいたのも。
しかし、昨日までパン食べ放題のコテージにいたはずなのに、まーーたここでもパン食べ放題であったりする。
パンはけっこう種類があったけれど、塩パンとかくるみパンなどはやはり昨日のコテージの方が美味しい……と脳内で比較しながらも、ここはここでデザート系のクロワッサンを推しているらしく、そちらを美味しく頂いた。
そういえば、きのうの牧場に生クリームとかチーズ類はなかったな。ヨーグルトと牛乳、アイスクリームはあったけど。
天文部の元会計の冬美さんは、去年の年末、家族でイタリアに行って、移動遊園地のゴーカートから転んで尾骶骨を骨折したらしい。……最近、石村まいさんの『パリで風邪をひいた』を読んだところだったので、海外旅行はやはりいろいろありますな、という感情。
みんなそれぞれに近況などいろいろ報告しあったりしたが、祖父母、義母の他界、義理の両親の離婚、定期健診の要再検査の告知……など、今更だけれどここ数年で特に10代と圧倒的に話題が変わってきたことを実感した。
夕方には奈良に帰り着く。夏生さんは今日仕事だが、もう晩は鍋とかでいいか……と思っていたら、17時過ぎにLINE。積雪のため迂回して帰るので遅くなるとのこと。
ということで、急遽変更して、豚肉と冷蔵庫にあった野菜いろいろをチリソースで炒めたりする。夏生さん、前回よりは全然早く20時前には帰宅。
寝る前に水槽を見たが、かたつむりが朝から殻の中から出てきていないようである。
トトロでサツキが七国山病院からの電報を読んで「お母さん、死んじゃったらどうしよう……」と号泣する気持ちとほぼ完全にシンクロする。なぜかたつむり(直径約3センチ)の生死が不明なだけで、こんなにも気持ちが乱れてしまうのか。
そういえば岡崎京子の『リバーズ・エッジ』で、主人公がこっそり世話をしていた野良猫が殺されてしまって号泣するシーンがあるのだけど、そこに「わたしはまだ愛し方を知らない」というモノローグが入るのである。
これめっちゃわかるーー、と思いながらも、さすがに自分はもう10代ではないので真顔にならねばならんな……とさめた部分もあったりする。
はやく寝よう。積雪で通行止めになったり、かたつむりが冬眠しかけたり、こんな思考に陥らせる冬がいちばんわるい。