【短歌とエッセイ】石村まい「キンキンの歯磨き粉」

今回は石村まいさんの短歌+エッセイをあなたのもとへお届けします
短歌マガジン 2024.05.24
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■石村まいプロフィール

石村まい(いしむらまい) @mai_tanka

山口出身、兵庫在住。俳句甲子園を機に俳句を始め、京大短歌を経て短歌も詠むようになりました。パンの話をするととても喜びます。 第1回カクヨム短歌連作部門最終候補作。 合作歌集『囁き記』。

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[短歌とエッセイ]

「キンキンの歯磨き粉」 石村まい

 おっちょこちょい度が高すぎて、おっちょこちょいのちょちょいのちょい(うるさい)と言ってもいいくらいの家系におぎゃあしたわたし。父は基本的にすごくしっかりしているわりに、へんなところが抜けていたりするのだが、やはり代表格は母だろう。とか抜かしていたら、一番はあなたでしょ!とつっこみが入りそうだが、否定しない。血とは争えないものだ。

 うっかりさんと言ってしまえばかわいいが、スーパーの買い物かごを持ったまま、ぽわんとレジをすっぽかして駐車場まで行きかけた話はちょっとあやうい。軽犯罪手前である。前科者の娘になるところだった。自動ドアあたりで気づくらしいのだが、その瞬間まで脳みそはいったいどこの野原を駆けめぐっていたのか心底謎である。「気づいた」ではなく「気づく」としたのは、一度だけではないからです。おーこわ。習慣づかないでくれ。

 車のトランクを閉めるときになぜか頭だけ残してミニたんこぶをつくったり、りんご狩りで渡されたハサミがなぜか帰宅後のバッグから発見されたり、一瞬一瞬は冷や汗ものとはいえ、話のネタが尽きない。ちなみにハサミを返すためにりんご農園に電話すると、あっもうそれあげます……という展開になったとのこと。自宅で狩るものなど遠景の桜くらいしかないのだが、捨てるにも捨てられないので、将来は妙に切れ味の良いハサミが遺品のひとつとして発掘される予定である。

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