【短歌のひみつ】堀静香「やめなかっただけ」
[次世代短歌プレミアム]
■歌人プロフィール
堀静香(ほりしずか) @shuzo_shizuka
1989年神奈川県生まれ。山口県在住。かばん所属。著書に『せいいっぱいの悪口』(百万年書房)第一歌集『みじかい曲』(左右社)『わからなくても近くにいてよ』(大和書房)「おだやかな激情」(晶文社)
[短歌のひみつ]
やめなかっただけ
堀静香
短歌のひみつ、というテーマで書かせてもらうことになって、わたしでよければもちろん、と二つ返事で了承してしまったのだけれど、かなしいかな作歌の場面において秘密めいたことは何一つしていないことに気づくのだった。
ただ、淡々と作っている。作ってきた。
何かを見て、見たままを、あるいは思ったことを31音に乗せている、ということを気づけば10年以上つづけており、そのこと自体が実は何よりも不思議で、というのも自分がこんなに長く短歌をやめずにいるとは思わなかったのだ。
わたしがやめずにつづけてきたのは、ひとつには新人賞という目標があったからかもしれない。獲れなかったからまた来年、そのまた来年、と延ばし延ばしでここまできた。獲れないならば、獲れるまでつづけてやろうと思っていたが、その途中で縁あって歌集を出すことになった。歌集を出すと、短歌の依頼が来るようになった。そうか、別に賞を獲らなくてもいいのか。