【短歌のひみつ】冨岡 正太郎「なるようになるの海」

今回は歌人冨岡 正太郎さんの短歌のひみつをおとどけします
短歌マガジン 2024.10.11
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[次世代短歌プレミアム]

■歌人プロフィール

冨岡正太郎(とみおか・しょうたろう) @left_ov

1996年兵庫県生まれ。

***

[短歌のひみつ]

なるようになるの海

   冨岡 正太郎

 あるいは蟹、あるいはプランクトンなのだろうか。

 短歌において、今まで試みたあらゆる習慣化は失敗し、すべての計画は頓挫してきた。

 歌が生まれるのは、一日いくつと目標を決めた机の上ではなかった。テーマと題を決めてイメージを膨らませた手帳の中でもなかった。むしろ短歌のことを忘れているときに突然思いつき、急いでLINEのKeepメモに断片を残すのが常だった。

 誰かの歌集を読んでいるとき、持ち前の集中力のなさがゆえに活字から目が滑り、単なる文字列に分解される。それが時折、ぼんやりと抱いていた個人的な感慨と結びつき、表現の方法となって手元に戻ってくる。そうした幸運は確かにある。

 移動中・寝床・お手洗い、のいわゆる「三上」で歌ができることもある。シャワーを浴びているときにフレーズを拾ってくることもある。しかしそれらとて、ひとたび意識が短歌の方を向いてしまうと、結局うまくいかなくなるのだ。

 短歌の器に言葉を満たすのではなく、短歌になり得る言葉がおのずと引っかかるのを、そ知らぬふりでひたすら待つ。こんなことでは新人賞への提出はおろか、ちょっとした連作の形を保つことすら危ういではないか。このコントロールのできなさは何なのだろう?

 そんなふうに考えながら横になっていると、にわかに自分が水面に浮かんでいるような感じがしてきた。

 身体は大の字になってゆったりと漂い、真上に固定された視界にはほんのり紫になった空がぽかんと広がっている。

 ここはどこだ? と心のうちに問えば、自分の口を借りて「駄目なほうの自分」が勝手に話しはじめた。

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