第20回毎月短歌・自由詠・テーマ詠「母」部門(選者:おいしいピーマンさん)選評発表

ネット月詠「第20回毎月短歌」,自由詠・テーマ詠「母」,選者:おいしいピーマンさんの選評です
短歌マガジン 2025.04.03
誰でも

[次世代短歌プレミアム]

(選者の原稿を預かり、編集部で記事化させていただきました)

はじめまして、おいしいピーマンです。

今回、自由詠とテーマ詠「母」の選者として、みなさまの歌を読ませていただきました。

数でいうと、自由詠・テーマ詠合わせて約350首。歌集1冊分ですね、すごい。

その中で個人的に印象に残った歌として、4首ずつご紹介させていただきます。

■印象に残った短歌

【自由詠】

王冠を集める君はどれほどの王を倒してきたのだろうか

/北野白熊

 「その王冠なのか」だったり、王冠を入手する方法=王を倒す という純粋で割と乱暴な理解の仕方だったり、「君」や、遠い目をしている感じの主体が謎だったりと、あちこち不思議がありつつ、一首・一文のまとまりがある面白い歌でした。

見上げれば粉雪そっと立ち止まる冬の自転車真白に染まれ

/アサコル

 粉雪に気づいた主体だったり、自転車だったり、その自転車に積もる雪だったり、粉雪は降っているのに、世界が静止(立ち止まる)しているような、静かさがある。すべてが真っ白になるほど積もるところまでは想像しておらず、あまり雪の降らない地域と想像します。雪はうれしい。

iPhoneに雪のマークがちらついて春一番のため息をつく

/あだむ

 春一番はちょっと暖かい強風を想像します。ため息は暖かくて速度が無いものを想像します。「春一番のため息」となると、めちゃくちゃ勢いがあって、ブレス攻撃みたいなため息を想像します。そういう、声もセットで吐き出す大きなため息、あります。先ほど「雪はうれしい」と書きましたが、通勤通学がちょっと怠くなったりする面もあります。

数式が解かれる音を聞いているだけの命は間違いらしい

/てと

 「数式が解かれる音」かっこいい。授業・テスト中とかで周りが数式を解いている中で、自分だけ手を止めているし、取り組もうとも思えない状態。ふとした時に感じる、世界からの疎外感・置いて行かれているような感覚が伝わってきます。

【テーマ詠「母」】

〔母艦ヨリ帰投命令受電セリ〕そんなことよりジャムを煮るわよ

/しみず

 〔〕内の文言の正確さについては判断ができなかったのですが、「わよ」は、自然な口調ではなく、わざとらしくつけている語尾のように読みました。歌全体の重さをゼロにする感じで気持ちよさがあります。ジャムを煮るという手間がかかる行為を持ち出している点や、まじめに取り合ってない雰囲気もいい感じです。

両親と相撲を観る午後案外と的確な母の解説を聞く

/琴里梨央

 相撲というと、架空の「昔の父親」みたいな像を思い浮かべそうになりますが、この歌では母が解説してるし、しかも的確。「案外と的確」というからには、この人自身も普段から相撲を見ているはずで、この歌に詠まれている場は、みんなが相撲を見たくて見ているものと思います。穏やかで、リアルな温かみがあるように思いました。

母さんはハンバーグだと言っていたハンバーグではなかったおかず

/宇祖田都子

 お弁当の話として読みました。自分はハンバーグが好きだし、一般的にもうれしい・期待してしまう側のものだと思います。実際に弁当に入っていたおかずがなんであれ「ハンバーグではなかったおかず」と認識してしまっているところから、ハンバーグへの期待度・ガッカリ感が感じられます。ハンバーグではなかったおかずも、おいしく食べ終えていてほしい。

三階のバルコニーから弁当を投げて届ける母の雄叫び

/宇祖田都子

 何度か読んでいるうちに、ダイナミックさと過剰さがだんだん良くなってくる歌でした。「投げる」「雄叫び」とくると、ハンマー投げが浮かびます。考えてみると、お弁当箱の入った巾着袋はハンマーっぽいですね。危ないし崩れたりぶちまけたりする怖さもありますが、そういう常識的な考えを吹き飛ばす用の雄叫びかもしれない。

以上です。

ありがとうございました。

***

■自己紹介

 おいしいピーマン(X:@pu2peshi

 ・所属:半夏生の会
 ・普段は新人賞に応募したり、投稿欄に投稿したりしてます。
  同人誌「半夏生の本」をよろしくお願いします。

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