【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第17回)9月21日〜9月27日

歌人toron*さんの短歌日記をおとどけします
短歌マガジン 2024.10.01
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ナイフのように爪先立ちで 第17回

toron* 日記 9月21日〜9月27日

  うろこ雲いつか家族もそのようにしずかにほぐれてゆく秋の空

9/21(土)

 ついに、わたしの家族と夏生さんの家族が若草山で一同に会する日が来てしまった……内心では「うわあああ……」という感じではあったのだけれども、7時に起きて全自動的に洗濯を済ませられる理性はちゃんと残っている。

 そういえば、先週の日記に書き忘れていたのだが、不備があったドレス(といいつつほぼワンピース)は、レンタル会社にその旨を連絡して、破損料金などが発生しないことを確認できた。万全の状態ではないけれど、ひとまずほっとするなど。

 夏生さんも朝から再度、車内に掃除機をかけたりしていた。

 11時前に近鉄奈良駅まで、わたしの家族をまずピックアップしてから向かう――

 そしていろいろあって、いや問題自体は何もなく2時間半くらいで会は終了したのだけど、案の定、ハイパー消耗してしまった……。

 会は、8.5割くらいはわたしの家族が喋っていてなんか申し訳なかった気持ちはありつつ、思っていたより夏生さんの家族に何も訊かれなかったことが逆にさびしくもあり……短歌はもとより、どこの学校出身とか仕事内容とかすら訊かれなかった。

 いや確かに訊かれても誇れるようなことはほとんどないので、触れないでいてもらって全然かまわないといえばその通りではあるのだけれど……。

 やはり家族って書類の上で「家族」に加わっても、そこからちゃんと「家族」として馴染むのはもっとずっとかかるのだろうな、と改めて思った。いきなり何もかも訊いたり話せたりする訳では勿論なく。

 ただそれでも、きょうのイベントとしてはちゃんと成し遂げたことには変わりはないし、あとホテルのコースはめちゃめちゃ美味しかった。義務感だけで乗り越えようとすると、ぜったいモチベーションが高まらないままなので、美味しいところにしよう、と夏生さんと話をしていたので、これはやはり良かった。

 家族をエスコートしなければならないイベントであるにせよ、主役はやはり自分たちだし、なにより自分たちの人生なのだから。

 晩ごはんは、昼ごはんの量と水準が高すぎたのでどん兵衛とおにぎり。

 おにぎりは昼のコースで出た鮭の炊き込みご飯を、ホテルのひとがおにぎりにして、お土産に持たせてくれたもの。

 こういう残りをおにぎりにしてもらって持って帰ることって、コロナがあってからできなくなった文化のひとつだと思うのだけど、それが再びできるようになっていたことがひそかに嬉しかった。

9/22(日)

 三連休ふつかめ。夏生さんは大阪の松原で友達と遊ぶとのことで、朝9時前には家を出て行った。

 わたしの方は、やらなければならないことがそれなりにあるのだけれど、まったくエネルギーが湧いてこず……おそらくきのうのでかいイベントが終わって、かんぜんに燃え尽きてしまったせいで、午前中、ソファに横たわったまま完全に「虚無」で過ごす。

 一応、こうなりそうな予感があったので、きのう帰宅したあと「寝るまでお互い自由行動にしよう」と、晩ごはんの時間も各自好きなタイミングで食べて、好きなことを黙々とやる時間にしていたのだけど(ちなみに夏生さんはポケモンSV、わたしは漫画と小説を交互に読んでいた)、結局切り換えられなかったようである。

 午後、何をしたか覚えていないほど何もしなかった。

 でも、晩ごはんは食べた。パックの豆腐をレンジで温めて水切りしてから、レトルトのもつ煮とねぎをかけて、柚子エールを飲む。それとレンジで温めるタイプの鶏めし。

 夏生さんが基本的に飲酒をほとんどしないひとなので、夏生さんが不在の日は反射的に飲酒するようになってしまっているのだが、きょうは何もしてないのに飲んでしまったな……と思うなど。思いつつ飲むが。

 飲みながら今週末、フィギュアスケートの近畿大会の観戦に行くので、ジャンプの見分け方の動画を黙々と見る。ちゃんと見た方がいいだろうな、くらいの意識は取り戻せた。

 夏生さん、9時過ぎくらいに帰宅。農家の友達に出石蕎麦、米などをお土産にもらったらしい。ありがたい。

9/23(月) 

 起きたらベランダの向こうに秋が立っていた。そういう涼しさでびっくりする。

 せっかくなので、美術館ピクミンをゲットしたくて、奈良県立美術館あたりまで散歩。日なたの日差しがもう格段にやわらかい。途中、泥浴びをする鹿をけっこう見るが、みんな雄である。

 美術館ピクミンはきょうもゲットできず。帰宅途中、マクドに寄ってアイスコーヒーを飲みつつ、この頃さぼりがちだった家計簿をつける。

 お祝いなどで入っていくものと出ていくもの、それぞれ金額が多くて身体がひゅっとなる。でも真面目につけていくと、来週からまたちゃんとやっていかねばなあ、という気持ちに落ち着いてゆく。

 といっても、まだ今ひとつエネルギーが足りない感じはあるのだけれど、さすがに明日からまた仕事なので、掃除機をかけて、常備菜としてかぼちゃを煮つけたり、にんじんのナムルを仕込んだりはした。

 やる気って動き出さなければ結局出てこないものらしいのだけど、動いてみても「もうこれでいいだろきょうは……」みたいな気持ちになるので、まだ本調子とはいいがたい。

 晩ごはん、鶏むね肉と丸茄子のチリソース炒め。えのきとちくわのお味噌汁。オクラのナムル。常備菜のナムルと被ってしまったけど、まあいいか……。

 食後、特に何をしたいという思いも湧かずぼんやりしてしまう。

 日が暮れてからも涼しかったので、ひさびさにクーラーをつけずに窓を開けて寝る。

9/24(火)

 寒暖差のせいかめざめたらうっすら頭が痛かった。

 ただ。これまでクーラーをつけて寝ると起き抜けまあまあなドライアイだったのだけれど、この症状はほとんどなかった。季節の折り返し地点を感じる。

 仕事中、黒の組織からまーーたよく解らない連絡があったことを出向先の部長を通して訊く。

 自分のなかの蛇崩先生(『メダリスト』に出てくるフィギュアスケートのコーチ)が「はーー、意味わからんのやけどーー」と笑顔で云っていた。

 そういえばストレスを逃す方法のひとつとして、「第三者目線で内心ツッコミを入れる」という方法があるらしい。生まれてからずっと関西人なので、内心第三者目線でツッコミをいれる行為をずっとナチュラルにやっている(そもそも関西人だいたいやってるんじゃないだろうか……)が、その「第三者」が最近自分のなかで蛇崩先生に変わりつつある。

 ただ、いいこともあった。

 ドレスのレンタル会社から連絡があって、不備があったお詫びとしてレンタル料金の半額返金してくれるとのこと。やったね。かるく飲みに行けるくらいの料金なので素直にうれしい。 

 晩ごはん、ケンミンの焼きビーフン。中身は豆苗、ベーコン、もやし。常備菜のかぼちゃの煮つけ。 夏生さんはさらに白ごはんと冷凍のからあげを温めて食べていたが、それでも足りなかったのか冷凍の炒飯を食べていた。

 食べ終わってから「もう少し何か食べたい」と云われたが、どんだけ炭水化物食うねん。「もうやめときなよ……」と云ったら、デザート的に先日もらったお饅頭を食べていた。これも炭水化物やな。

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