【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第43回)3月22日〜3月28日

歌人toron*さんの短歌日記をおとどけします
短歌マガジン 2025.04.02
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[短歌日記]

ナイフのように爪先立ちで 第43回

toron* 日記 3月22日〜3月28日

  スクロールにあなたがいない春もあり空はデニムの重さと青さ

3/22(土)

 きょうはわが家で夏生さんと十首会。黙々とPCの前でふたりとも1時間半短歌をつくる。

 ちなみにわたしは二十首、夏生さんはロスタイムを含めて十首完成させた。

 わたしも夏生さんも前回(第1回時)よりスムーズにできたので、今後も2週間おきくらいにやっていこうということになった。

 17時からの笹井賞の授賞式の配信動画を見ながら、サングリアをあけてしまう。

 お名前を存じているひとばかりなので、それぞれの受賞のことばに胸が熱くなった。

 ぷくぷくさんの受賞のことばの「子どものときの自分と出会いなおすような感覚」、また汐見さんの「短歌について考える時間があるという幸運」ということばが印象的だった。

「ぷくぷく」という筆名が選考委員すべてに好意的なところも嬉しかった。自分もこういう筆名なので、名字のない歌人に同郷のひとに対するような感情を抱いてしまう……。

 晩ごはん、きょうはふるさと納税のほたて。バター焼きと刺身でいただく。

 それと残っていたキットを使ってのせんべい汁。自宅で青森フェス。しかしそれだけでは、夏生さんの胃袋を満たすには足りなかったので、厚揚げも焼きました。

 むつ湾のほたて、めちゃめちゃ美味しい……これを毎日食べていた青森での1週間がなつかしい。今年もふるさと納税は外ヶ浜町にするぞ。

 そういえば明日は歌集の批評会に参加するので、今更ながら短歌の濃い週末になるなと思った。いい土曜だったので、あしたもいい日曜にしたい。

3/23(日)

 きょうは京都で小田桐夕さんの歌集『ドッグイヤー』の読書会。

 これまで京都には特に考えもなく近鉄で向かっていたのだが、JRで行った方が楽ということに2年かかってようやく気がついた。JR奈良駅も京都駅も始発なので往復確実に座れるのだよな……座席の埋まらない大和路線のしずけさよ。

 批評会のパネラーの発言を聞いていると歌集にスポットを当てている場所がそれぞれ違っていて面白い。

 あと「難しい歌集だった」の難しいの意味をいろいろと考えさせられた。「岡井隆と真中朋久の影響」という指摘も、ちょっとまぶしかったというか、自分も自分の短歌に歌人をふたり改めてインストールしてみたくなった。

 また、思っていた以上に会場参加者の応答の時間が長くとられていて、しかも挙手制ではなくて名指しで当てられてゆく。当たるな……当たるな……とかなり緊張してたが、こういうときこそ当たってしまうんですよね。

 マイク越しの自分の声にびびりまくったが、自分が塔に入った初年度の塔新人賞の候補作が『ドッグイヤー』だったので、それをタイトルにした歌集が出たよろこびを伝えられてほっとした。

 ちなみに自分の好きな歌は、

  けつきよくはしんぷるな人が好まれて君の履歴書の職歴二行

  鹿の角に触れてゐたのはそれぞれに隠しごとをもちよつたひとたち

  黙すまま水を飲みたりうちがはのみづうみつねに未満の水嵩 

 という歌だったのだけど、あまりディスカッションでは上がって来ず……と思っていたら、隣に座っていた山下泉さん(だったとこの時点で知ってびっくりした)が、鹿の角の歌を挙げてくれていて嬉しかった。

 帰りがけに山下さんに改めてご挨拶して、また、ふだんから気にかけて頂いている澄田さんともお話できて良かった。

 澄田さん、お洋服もとても素敵だったのだが、そのこともちゃんとお伝えすれば良かったな、と終わってから気づくなど。横浜の全国大会でまたお会いできるのが楽しみ。

 日曜だし明日が早かったので懇親会は辞退したものの、近頃各段にお酒が弱くなっているのに、酒を飲みたい欲求だけはそのまま顕在していて良くない。

 夏生さんは友だちが奈良に訪ねてきてくれて、各所案内しているらしくまだ帰ってきていなかった。

 パスタと炭酸水などで晩ごはん。その後、明日からの常備菜を仕込む。味玉、にんじんと玉ねぎのマリネ、パプリカの煮びたし、もやしナムル、切干大根とかにかまのサラダなど。

 20時前に夏生さんが帰宅。酒造・春鹿がつくったお酒の香りのする茶葉をお土産に買ってきてくれた。

 疲れているけれどエネルギー的なものは充填された感じ。横置きになってすぐに意識を失う。

3/24(月)

 職場の、わりと年配の方なのだけどわりと他人の買いものやランチに対して、内容ではなくお金の物差しでコメントする人がいて……以前からそんな傾向だったのだが、春だからなのだろうか。

 かなりあけすけに「こんなにするの?」とか「よくそんなに出せるね」とかダイレクトに云うようになってきていて、遠くからその人のそういうコメントが聞こえてくると、ちょっとぐったりしてしまう。

 何に人が投資していてもええやないか、とかその他いろいろな角度から突っ込めるが、ひとまず他人のそういう言動をに心を寄せてしまうこと自体、自分に余裕がなくなっているな、と知れて良かったのかもしれない。せめて自分は思うだけにしよう(しかし米の価格、相変わらず高いなあとは積極的に云っていきたい……)。

 下の妹の誕生日が今日だったので、リクエストされていた『吸血鬼すぐ死ぬ』の短歌(十首程度・キャラリクあり)を画像にまとめてLINEで送付する。

 昼休み、かなり激しめな感激の内容が返信されてきて、「こういう感じでいいのか……?」な気持ちだったので、ひとまずほっとした。

 その後、Xでアカウント名をつけて、下の妹がその画像を投稿していたのだが、いいのかい、お姉ちゃんにアカウントばれて……いや、きみがええならええんやけども……。

 しかしそれによって、短歌以外の吸死界隈の方にもリポストしてもらって、そうかそういうカップリングがあったのか……と下の妹の謎のリクエスト内容にようやく腑に落ちたりもした。奥深い……。

 とはいえ今後、自分ではむずかしいだろうが何処かで『吸血鬼すぐ死ぬ』の短歌アンソロジーなるものが企画された際には、ぜひ名乗りをあげたい所存。

 晩ごはん、出来合いの肉団子と甘酢あんに野菜をプラスして炒めたもの、えのきと小松菜の中華風スープ。常備菜いろいろ。

 そういえば、夏生さん花粉症が今ハイパーひどい。ただアレジオンを飲むと鼻水が「固まる」らしく、市販薬が飲めないらしい。え、固まったら駄目なん?

 自分も今年は若干眼がしぱしぱするような気がしていたのだけど、この様子を見ていると花粉症ではなくて、単にドライアイなのかもしれない。

3/25(火)

 気候が順調にあたたかくなってきて、ついに冬用のパジャマを薄手のものに変えた。

 気持ちもついつられて浮かれそうになってきたので5月の出費の予定……東京文フリの往復新幹線、そして塔の全国大会参加費、ホテル1泊、往復新幹線、などにかかる諸々のお金の計算をしてみたところ、いっきに気持ちが引き締まり、むしろそれを通り越して懐が極寒になった。

 しかし、ちょうどきのう「お金がない」ということはせめて自分の心だけに留めておきたいのであるなあ(詠嘆)、と感じたところだったので、無表情で数独のアプリなどをして落ち着くことにつとめた。

 ここで短歌によって心の安定を図れたら歌人らしかったのだけど、やんぬるかな、数字をマスに埋めまくることで落ち着いてしまう……自分の現実主義がさびしい……。

 晩ごはん、鶏むね肉のチャーシュー、野菜のお麩とえのきのお味噌汁、常備菜のパプリカの煮びたし、にんじんと玉ねぎのマリネなど。

 しかし実際、新幹線などは早特を利用してはやめに押さえておきたい気持ちがあるのだけれど、平日の夏生さんは疲労困憊していて判断力が格段に落ちているので、土日の午前中くらいに切り出そうかな……忘れないようにせねば。

3/26(水)

 きょうはテレワーク。朝からかたつむりが伸びているので、これは気温があがってくるな……と予感していたが、案の定、暖かいを通り越して暑くなる。家のなかで裏起毛のトレーナーとか来ている場合じゃないですな。

 そういえばかたつむりは先週につづき今週も順調に増設をつづけていて、ついに1センチくらい殻が延長した。すごい、伸びしろありまくりでうらやましい。

 夏生さんは日に何回も水槽を覗いては、「まいちゃん、大きくなったねえ」と盆と正月のみにしか会わない親戚のようなことを云っている。

 と、非常におだやかなテレワークだったはずなのだが、仕事終わりにとうとつに、黒の組織から電話がかかってきて震えあがる。おれの穏やかな日常を一瞬で瓦解させてくる黒の組織からのTEL……!

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