【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第19回)10月5日〜10月11日

歌人toron*さんの短歌日記をおとどけします
短歌マガジン 2024.10.15
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[短歌日記]

ナイフのように爪先立ちで 第19回

toron* 日記 10月5日〜10月11日

  ゆっくりと旅のからだに仕上がってスーツケースの色は快晴

10/5(土)

 めざめたら、9時過ぎだった。途中で眼のさめることもなかった。

 先週の体調がビミョーだったので、がっつり7時間寝てしまった……でもひさびさにすっきりした感じもある。

 昼過ぎ、夏生さんの車で国道沿いのワークマンに行く。

 来週、青森に行くのだけど上着がこころもとないので買いに来たのである。毎年この時期、羽織るものがなくなる現象、なんなのだろう……薄手のカーディガンと、裏地つきのジャケットのその中間の存在がいないまま、秋を何回もやり過ごしてきてしまった。

 事前にホームページで目星をつけていたトランスフォームジャケットが、やっぱりかなり良かったので買う。これは畳んでコンパクトになるだけではなく、背中のポケットに上着を全部突っ込むとショルダーバッグになる(自分でも何を云っているのかよくわからねーのだが、確かにショルダーバッグになる)を買う。2500円。

 夏生さんもジャケット(これは畳んでもコンパクトにならない)、仕事用のズボン、3割引きの半袖シャツなどを買っていた。お互いさいきん、ユニクロよりワークマンを見に行くことが多くなった。

 その後、郡山イオンに行って、旅行関連の要りそうな小物類を買ったりする。

 酔い止め薬、下着類を入れても透けないような洗濯ネット、無印で小物などなど。

 1週間とはいえ国内だしふつうにホテル泊なので、何かあれば現地調達すればいいので、今のところ小型のキャリーケースとリュックでもやや余裕のある感じで収まりそうな感じ。あとスマホの電源が心配なので、電子書籍ではなくて紙の本を持って行くのだけど、この荷物の量だと文庫2冊、歌集1冊くらいは入りそう。

 旅行の前の愉しみ、夏生さんは、運転のルートを考えているときだと云っていたけれど、自分はおそらく旅行に持って行く本を選んでいるときな気がする。

 自分なりの理由で無数の選択肢のなかから選び抜く過程が楽しい。

 今のところ自分のなかのセットリスト・青森は、

 ・太宰治『津軽』(弘前に行くので)

 ・九條今日子『回想・寺山修司 百年たったら帰っておいで』(寺山修司記念館に行くので)

 ・短歌アンソロジー『月のうた』(旅行中スーパームーンを迎えるから)

 が、有力候補なのだけど、前日までに変動があるかも。

 晩ごはんにイオン1Fの「シジャン」でフローズン冷麺。この夏、食べそびれていたので無事に食べられて良かった。でも既に10月なので、食べ終えて全身ひえひえになる。

10/6(日)

 今朝も夏生さんと車でイオンに行く。今日は『ラストマイル』を観に高の原イオンへ。

 『MIU404』も『アンナチュラル』も未視聴のままだったので、どうかな、と危惧していたのだけど、全然たのしめた。

 もっとも、現在進行形で黒の組織に所属しているので、情緒が崩壊しそうなシーンもまあまああったが……満島ひかりが演じるセンター長を何度か殴りたくなるシーンもあったなあ……でも、満島ひかり役のセンター長は、口だけでなくて自分もしっかり現場で動くのが良かった。

 あと、情報量が多くて、一度通して見ただけでは映画全体に仕掛けられた言葉やギミックに気づききれなかったと思う。なので何度も見たくなる人の気持ちがわかるというか……自分もまだロッカーの中にあったメッセージやラストシーンが、整理できていない感じ。

 映画の後、家の近くの業務用スーパー、イオンビックで食料品の買い出し。イオンばっかりやな。

 奈良県民は休日のレジャーはだいたいイオンに行く、ということをXでネタとして見たことがあったが、ネタというか実際ふつうに真実なのだろう。

 奈良には大阪や京都にあるような、駅直結の食料品や服飾品の店舗が入っているモール的なものがほぼ全くなく、かつ移動手段がほぼほぼ車になってしまうので、必然的に郊外型イオンで「すべて」をまかなうことになるのである。

 そういえば以前、道券はなさんと以前お会いしたときに「奈良では休日どこに遊びに行くんのですか」とお訊きしたら、

「イオンとかですかね……」

 と云われたので、やはり奈良県民の休日のレジャーはイオンに行くということで、おおよそ間違いないのだろう。自分もだんだん奈良県民らしくなってきた。

 晩ごはん、マグロの漬け丼、えのきのお味噌汁、かぼちゃ煮つけ、ごぼうと鶏皮の甘辛炒め。

 21時半から今月の恋愛短歌同好会キャス。

 『ゴールデンカムイ』のドラマ第1回目と被っていて痛恨だった。ショックで参加者にどのキャラが好きなのか訊いてまわったりしてしまった。自分は鶴見中尉が好きです。

(キャスも滞りなくたのしくできました)

10/7(月)

 きょうは出社。青森旅行で恐山にも寄ることを先週くらいに美潮さんに話したからか、部内に恐山メインで行くみたいなニュアンスになって広まっていた。

 いや、まあ別にいいっちゃいいんだが……寺山修司記念館とか寒立馬とか、たぶんわりとニッチで魅力を説明しにくいものを見に行く自覚はあるので……ひとまず「恐山でピクミンのキノコがあったら、みんなを呼びますね」と云っておいた。

 晩ごはん、 昨日仕込んでおいた、夏野菜の焼きびたし。もう全然夏じゃないけど、夏野菜。ししとうの赤と緑、茄子とちくわを使用しました。それと鶏わさ。梅と塩昆布、めんつゆ、ごま油を混ぜたたれで食べる。えのきのソーセージのお味噌汁、白ごはん。

 鶏わさはささみに片栗粉をまぶして、わりとしっかりめに茹でたもので、自分の中の「鶏わさ」ってこれじゃない感なのだけど、いちおうこの名称で『きのう何食べた?』に載っているのでその通りにつくった(美味しかった)。

 塔の月詠、夏生さんがまだぜんぜん清書する気配を見せない。

「今月は旅行に行くから出せるリミットは11日だよ」と云ったら「つくりたい気持ちはある」と返される。

 ちなみにわたしの方はというと、吝嗇なので、郵便料金の変わる前日の9月末日に、既に出しているのだった。

10/8(火)

 出社。気圧のせいか朝からぼんやり。

 でも通勤時間に旅行の予習(でも再読なので復習?)として、寺山修司の『誰か故郷を思はざる』を読む。やっぱり面白い。ただ、この本と出会ったころの10代の自分より寺山修司を知っているので「いや、あなたたぶんバーテンダーとかやってなかったですよね……?」と、寺山が実人生に施した「消しゴム」に対して、突っ込みながら読めるようになった。

 寺山修司は既に自分に重ねて感じる存在ではなくて、壁に掛かった絵を眺めるくらいの距離をもった存在になってしまったのだと思う。

 晩ごはんは夏生さん作。鶏もも肉とピーマン、えのき、にんじんのケチャップ炒め。豆腐と豆乳のつめたいスープ、常備菜のかぼちゃの煮つけ、白ごはん。

 結局終日うっすら眠くて、23時前にはベッドに入る。『ゴールデンカムイ』の見逃し配信、きょうも見れず。

10/9(水)

 きょうはテレワーク。昼休みに焼きビーフンを食べながらドラマ版の『ゴールデンカムイ』の第1話を見る。

 やっぱり面白かった。二瓶鉄造、けっこうリアルだったな……リュウ(湯たんぽ)もかわいかった。来週からやはりWOWOWオンデマンド、契約するしかやな。鶴見中尉もまたがっつり見たいし……。

 きょうは仕事後、実家に行くため大阪へ。旅行中、かたつむりを預かってもらうためである。まいちゃんは今回も実家に歓待されていた。日記に書いていなかったかもなのだけど、実はまいちゃん、先週くらいから殻を増設しはじめて、2センチくらいサイズアップしたのである。

 晩ごはん、蓮根の入った鶏のつくね、ししとうのきんぴら、かぼちゃのいとこ煮、などなど出されるがままに食べる。父上が酒をすすめてきたが、断ったら思いのほかがっかりしていた。

 食後、下の妹がMDノートを見せてくれる。さいきん歌集から好きな歌を書き写しているのだという。

 下の妹が今いちばん好きな歌人は榊原紘さんらしく『悪友』と『koro』の歌がノートにびっしり書かれていた。あと、さいきんわたしがすすめた中澤系さんの歌集も買ったようで、写されていた、

  出口なし それに気づける才能と気づかずにいる才能をくれ/中澤系

  飼い慣らすべし獣ほど猛々しくなくてそれでも日々とは獣/同

 の歌は、自分もかなり好きだった。

「次は野口あや子ってひとの歌集読みたいな、と思ってるんだよね……あと、木下龍也まだ読んだことないけど、最初に読むってどれがいいんかな」

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