【短歌日記】toron*「ナイフのように爪先立ちで」(第26回)11月23日〜11月29日
[短歌日記]
ナイフのように爪先立ちで 第26回
toron* 日記 11月22日〜11月29日
まだ冬は遠くに見えるだけなのに本音の方にも厚着をさせて
11/23(土)
きょうは京都の塔短歌会の事務所で『「銀河を産んだように」などⅠⅡⅢ歌集』の読書会。
第3歌集の『竹とヴィーナス』を中心に……ということを事前に訊いていたのだけど、午前中に送られてきたレジュメを見ると、まあまあ全体的に歌をとりあげている……第1歌集、第2歌集も通して読んではいたものの付箋は第3歌集にしか貼っていないので、若干焦る。
が、近鉄の車中のひとになるころには、まあ喋れそうなこともあるのでなんとかなるかーの気持ちになった。
参加者は塔からいわこしさん、吉岡さん、宮下さん、河野美砂子さん、前田康子さん。ZOOM参加で江戸さん、玲瓏の尾崎まゆみさん、とけっこう豪華な読書会になった。
第3歌集から一首立ちではなく連作として成り立つ歌が増えてきたことや、実はけっこう当時の時事(アフガニスタン侵攻、BSE、メガバンク破綻など)を題材に詠んでいる歌も多かった。
亜米利加はあ目りか(彼は知っていた)布、布、布、布、いつまでの風/大滝和子『竹とヴィーナス』
という、どういうこと……的な歌も、時事問題やみんなの読みと照らし合わせるとクリアになっていく部分があって、面白かった。尾崎まゆみさんは大滝さんと同時代の歌人なので、当時の話を聞けたのも良かった。
終了後、烏丸御池の「酔心」でかるく打ち上げ。
いわこしさんと居酒屋にきたときはだいたい熱燗をシェアして飲むので、どのくらい飲んだのか解らなくなってしまう。が、たいがい飲みすぎている。そしてお酒が美味しかったときはだいたい話すぎてしまう気がする。
話し足りないくらいがほんとうはちょうどいい、ということは解っているのだけれども、自分のわるい癖のようなもので、そういうときはだいたい毎回うっすら後悔しながら帰宅してしまう。
それでも、飲んだ帰りに記憶を落としてくることは今年なかったので、良くなってはいるのか、どうなのか。
22時過ぎに夏生さんも帰ってくる。きょうはおばあちゃんのお見舞いに行っていたのだった。
柿、スガキヤの味噌煮込みうどん、手羽先、三河のお菓子などたくさんお土産を持って帰ってきてくれた。
11/24(日)
8時過ぎに起床。きのうのお酒は残っていないけれど、ぼんやり感が強い。ぼんやり原稿をやってかたつむりの水槽の掃除をする。
わが家のかたつむり、葉物をあまり食べてくれない。
全国各地のかたつむりブリーダーたちのブログなどを見ると、小松菜、レタス、キャベツなど、わりと淡白な葉物が好きなケースが多いのだけど、わが家のかたつむりはどれも無視で、それらが水槽に入っているときはコンクリートを齧っている……本人(?)はそんなつもりはないのかもしれないが「食べられるもんないから岩食べるしかないやんけ」という雰囲気である。
かたつむりの触角は匂いと味を判別できるらしいので、食の好みとかやはりあるのだろうか……ちなみに入れたら必ず食べるものはにんじんとチラシである。
微妙に天気が悪くて、何処かにいこうという気力もわかず、掃除などしていたら一日が終盤になってしまった。
晩ごはんにチャプチェ、白菜のサラダ、なめことその他きのこのお味噌汁、白ごはん。
先々週からずっと、夏生さんがテーブルの上に年末調整の書類を放置したままなので強めに叱る。叱ったら「書きたい気持ちはある……」といって、ようやく着手していた。
11/25(月)
起きた直後から重力を感じる。背中から腰にかけて不調。プラスうっすら頭痛。
寒さとか気圧とかの所為もあるのかも……わりとすぐ鎮痛剤を飲んだものの、あまり緩和せず、これはきょう整形外科案件か……と思っていたが、なぜか15時くらいになってかなりマシになってくる。いや、あと3時間くらいで仕事終わるのだが。
晩ごはん、きょうはわたしの担当。鮭のホイル焼き、きのうの残りのチャプチェ、えのき、うすあげ、ちくわのお味噌汁。
鮭のホイル焼きは、アルミホイルに玉ねぎを敷いて、甘塩鮭とひらたけを包んだだけ。焼きあがったらバターをのせてレモンを絞って食べる。
めっちゃ簡単なのだけど、夏生さんは「天才……」となぜか感動していた。普通に焼くより短時間でできるし、またつくろう。
そういえば夏生さん、きのうようやく書いた年末調整の書類を持って行くのを忘れていたのだが、間に合うのだろうか。もう来週12月やで……。
かたつむりに豆苗を1本豆ごとあげてみたら、葉の部分は全部のこして豆の部分だけ完食していた。既存のイメージを覆してくるかたつむり。
11/26(火)
なぜかきょうが土曜日だと信じこんでいて寝坊しかける。なんでだよ、おれの1週間はまだはじまったばかりだぜ……間に合わずお弁当づくり断念。
しかし夏生さんの弁当箱も洗い籠に置いたままになっていたので、夏生さんも寝坊しかけたことを知るなど。
しかしながら自分に対して相当な吝嗇なので、基本的にお昼は買いたくないという思想なのだけれど、ひさびさにファミマで買った胚芽パンのサンドイッチはけっこう美味しかった。さいきん、コンビニのおにぎりとかおかず、パン類の味付けが全体に濃く感じてしまってしんどいときがあるのだけど、あれは体調かなにかだろうか。
晩ごはん、夏生さん作の豚キムチ。きのうのお味噌汁残り、白ごはん。
豚キムチに入っていた豚こまがけっこう柔らかくで美味しかったので夏生さんに伝えると、豚こまではなく豚ロースだかららしい。
日記にも書いたような気がするけれど、以前、豚こまでちょっと食感が微妙なやつと遭遇してからトラウマ(トラウマか?)になってしまったらしい……。
11/27(水)
きょうも本来ならお弁当をつくり終えていなければいけない時間に起床してしまった……しかもいつもの電車にも乗り過ごす。まじか……でもなんとか始業前に間に合ったので良かったが。
いや、良くはないか、こういう類の成功体験は。
アラームはスヌーズにしているのだけど、まったく意識がないまま最初の2回を秒で止めているようなのである。今夜くらいから、スマホをベッドから離れた位置に置くしかないのか……。
仕事終わりに整形外科に行く。たぶん今週で3週間めくらいなのだけど、確かに徐々に痛みがぶりかえしにくくなっている。とはいえ、この仕事をしている限り、基本的に快癒はないらしい。つまり仕事は身体に悪い。
晩ごはん、夏生さん作の焼くだけの鯖のみりん干し、卵とニラの炒めもの、白ごはん。
ちょっとうつうつとすることがあって、あまり歌集が読めない。
もう今月は短歌に触れないで小説でも読むかーー、と電子書籍内に積んでいた(本は電脳空間にも積むことができるのである)『同志少女よ、敵を撃て』を読みはじめる。
めちゃめちゃ面白くていっきに半分くらいまで読んでしまって、いつのまにか夜の1時だった。
11/28(木)
スマホをベッドから離して置くことによって、ようやく本来起きるべき時間に起きられた。
というか、起き抜けの部屋さむすぎ。起きる時間にエアコンのタイマーをセットした方が良いことにようやく気がつくなど。
きのうから読みはじめた『同志少女よ、敵を撃て』を休憩や移動時間に黙々と読む。
第二次世界大戦の独ソ戦を戦ったロシアの女性狙撃兵の話なのだけど、複雑な背景や、各国の微妙な力関係、専門用語がけっこう出てくるにも関わらずめちゃめちゃ読みやすくてエンターテイメントにもなっている。
作者が相当な文献を読み込んでいる雰囲気があるにも関わらず、「説明」だけにならず戦場で人間がどう変わってしまうのか、感情面がとてもていねいに描かれていると思う。
晩ごはん、焼きそば。
今週、ほとんど夏生さんが晩ごはんを担当していたのだけど、ちゃんと毎回ごはんを炊いて、主菜と副菜を用意しているのでけっこうしんどそうだった。
なので「焼きそばとか、パスタとかで全然いいんだよ」と先日云ったところだった。
小松菜、パプリカ、豚肉、ちくわと、具がけっこう入っていて美味しかった。関西人なのでソース味だいすき。毎週焼きそばでもいい。
11/29(金)
きょうは仕事後、職場の立羽さん主催の飲み会。わたし、岬さん、星田さん、大野さんのメンツで心斎橋の駅前のメキシコ料理店に行く。
そういえばこのお店、けっこう昔からあるなあ、と思いつつ入ったことがなかったが、18時に入ってもなかなかの混み具合だった。
タコスのセット、ナチョス、ケサディーヤ、メキシカンサラダなど、あまりふだん耳に馴染みがないラインナップをいろいろ頼む。コロナビールとサボテンのマルゲリータも頼む。サボテン、林檎に近い風味がした。
サラダはアボカドとサワークリームの取り合わせが美味しかった。
アボカド、夏生さんがあまり好きではないので、奈良に来てからほとんど食卓にのせていなかったのだが、これは自分が食べる分だけでもつくってみようと思った。ケサディーヤはクリスピーピザみたいな感じでこれも美味しい。
全体的に炭水化物率が高いラインナップだったのだが、巻いたり包んだりするための具材にだいたいトルティーヤチップスが入っているので、炭水化物の総量がさらに高まっていた。
「だいたいどの具にもドリトスみたいなの入ってますね」と岬さんに云うと、「せやね、ドンタコスみたいな感じの」という返しをされて、なるほどこれが
それ系の食べ物みんなドンタコスときに世代で括られている/藤井柊太『パースペクティブ』
なのか……と、思ったりした。いやでも、ドンタコスだから40代、みたいな限定の仕方はできないか。
その後、ひさびさに二次会の立ち飲み屋へ行って、23時くらいに奈良へと帰り着く。トータル4杯くらい飲んでしまったけれど、なぜだか微妙に眼がさめてしまって、湯舟につかりながら『同志少女よ、敵を撃て』を最後まで読む。
ラスト50ページを読むあいだ、2回泣く。
(つづく)
toron*さんクラス「短歌投稿のコツ」シーズン2、はじまります
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■歌人プロフィール
toron*(とろん) @toron0503
大阪府豊中市生まれ。うたの日育ち。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。第1歌集『イマジナシオン』(書肆侃侃房)。
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