【短歌とエッセイ】おばけ/金田冬一「先輩のフグ」&自選短歌集

今日は おばけ/金田冬一さんの短歌+エッセイ「先輩のフグ」と自選短歌集(35首)をみなさんのもとへお届けします
短歌マガジン 2024.06.19
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□歌人プロフィール

おばけ/金田冬一(かねだとういち) @obake627

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***

[短歌とエッセイ]

先輩のフグ

   おばけ/金田冬一

 大学の頃の二個上の先輩から電話がかかってきた。その人は小説を書いたり曲を作ったり構成作家をしてYouTuberをバズらせたりしている。

「もうだめだよ俺は」

 そのとき僕は歯磨きをしていて、そろそろ寝ようと思っていたので、ふーぬぬーふぁ、と口の中に泡を含んだまま適当に相槌を打った。

「聞いてくれよ」

 ふぬ、と僕はジャコジャコ歯ブラシを動かしながら相槌を打つ。

「フグがなー」

 ふるぅ、と僕はもう口が空っぽだとしても言葉として成立していない適当な音で応じる。先輩は大学生の頃も海辺でフグを釣って「ペットにします」と発言しているVlogをYouTubeにアップして、コメント欄で「フグが可哀想」「虐待だ」「愛がない」と叩かれていた。先輩は黙ってゆっくりとコメントをひとつずつ削除していた。当時のフグは半年ほどで死んだ。その時に僕はフグが可哀想だし虐待だし愛がないと先輩に言ったら、先輩は泣いた。

「フグがな、死んじゃったんだ」

 ぷへっと泡の水を薄汚れたシンクに吐き出して、またですかと返事をする。

「そんなこというなよ」

 今回はどれくらいの期間飼ってたのか訊くと先輩は「はんとしー」と泣き声で言った。それなら寿命ですねと僕は返答した。

「こんにちはー、ウーバーイーツです!」

 電話口の先輩が急に叫んだ。相手をするのが面倒になってきたので、自転車を漕ぎながら通話するのは犯罪ですよと言って電話を切った。

 十秒後にスマートフォンの画面が緑色に光ったので、電話マークを押した。

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